【第300話】荒波に帆を上げて進み続けるための思考態度

「これを機に、お店を移転することにしました」というのは、以前からお店の移転を考えられていましたが、まずは今のところでもう一段上の商売を目指してから…、と仰っていた社長。

 

聞けば、新型コロナの影響で、好条件の物件が出てきたことから、新天地でとの思いで心機一転、これからの存続発展に賭けてみるとのことです。

 

企業寿命30年などと言われる世の中にあって、商売の命脈を保ち続けていくというのは、とても大変なことです。

 

実際、経営者の集まりなどで、「当社は今年70年を迎えます」といったご挨拶があったならば、そこには一際強い拍手が送られます。この拍手は、これまでに起きてきたであろう困難を乗り越えてきたことに対する敬意です。

 

当然のことながら、商売を続けていくということの意味は、実のところ様々です。例えば、会社名を繋いできた、商品の看板を守り続けてきた、業種業態を変えながらも事業を続けてきた…といったことです。

 

どのような会社にあっても、これまでをお聞きすれば、それは波乱万丈、目頭が熱くなることも度々、壮絶極まりない歴史があるものです。

 

株式会社の設立が資本金1円で出来る時代にあって、会社の売買さえも一般化する社会にあって、カイシャという法律上の単位自体の重要性は薄れつつありますが、そうであったとしても、カイシャという社会的な生き物が、経営者と従業員が共に生きるための場であるという重要性に何ら変わりません。

 

このため、事業経営、カイシャというのは継続を前提とされており、よって、継続企業、ゴーイングコンサーンという考え方は、今の世にあっても経営者思考の一丁目一番地と理解されています。

 

仕事柄、多くの経営をお聞きしますが、数十年、数百年という長きにわたって存続発展を保ってきた企業には、実にシンプルに共通する点があります。

 

それは、商売人としての“気高さ”です。ここでいう“気高さ”とは、プライドや頑固…といった個人的なことではありません。社長、経営者として、組織の代表者としてのキレイごとではない商売の本質レベルで“気高さ”を保ち続けるということです。

 

これは少し言い換えるならば、どこまでも「仕事人たれ」ということでもあります。

 

とても大切なことなので、もう少し補足すれば、お客様や世の中という外側に対して、絶対的に“気高さ”の土俵から降りてはならないのです。

 

もう少し具体的にいえば、例え御社の台所が火の車であったとしても、お客様にその態度を見せて情けを乞おうとしてはなりません。

 

難しい話をしているのではありません。売れ残り在庫を「もったいない」などという社会的意義にすり替えて売ろうとしてみたり、もっとあからさまな場合には、「助けてください」などと言ってしまうことのないように…とお伝えしています。

 

もちろんこれは、株主や銀行に財務状況や損益について本当のことを言うべきではない、などと申し上げているのではありません。こちら側にはビジネスとして誠実に正確な情報をお伝えすべきことは当然のことです。

 

そうではなくて、お客様、世の中に対して、プロであるという“気高さ”の土俵から一旦降りてしまうという取り返しのつかない失策について、ご理解いただきたいのです。

 

世の中の荒波にあって、一時的に財務状態が悪くなることもあるでしょう。しかし一方で、その荒波を進んでいくためにも、仕事人としての“気高さ”が欠かせないのです。

 

社長なのです。リーダーなのです。そういう立場の人間が、売上を商品サービスの対価としてではなくて、苦し紛れに「もらおう」としたならば、その後どうなるかということです。

 

苦しい時こそ、自社の商品サービスをお客様のためにどう使えるのかということを、泥臭く必死で、降りずに“気高く”考える思考態度が大切です。

 

御社にしかできない“気高さ”は何ですか?

社長である限り、絶対に降りないと腹を決めていますか?

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