【第299話】トップメーカーになる法人営業の準備術

「実は…、営業の時、この製品パンフレットはあまり使ってないんです」という営業部からのうつむき加減の“告白”には、何やら根深いものを感じます。

 

お聞きすれば、技術部が作っている製品パンフは、商談で使うにはしっくりこなくて、よって、営業サイドで別の資料を作って商談にあたり、製品パンフは参考程度にお渡ししているというのです。

 

営業で使いにくい、しっくりこないパンフレットと聞いて、経営者ならば「あるある」といくつも頭に思い浮かんでくるに違いありません。ところが、自社のこととなると難しい…、という現実があったりするから不思議です。

 

大抵の場合、技術者が作る製品パンフレットというのは、「製品開発報告書」になりがちです。パンフレットは、開発の必要性や背景の説明から始まり、従来製品の課題が整理され、新たな技術開発でその課題が克服され、こんな用途に使えるかも…と適用例が示されます。

 

いかがでしょうか。思い当たる節があるでしょうか。「あ、あ、あ…」、「やっちまってる…」、「違うの?」と思われたならば、それがどうダメのかをお伝えしましょう。

 

まず、商談にはプロセスがあるということです。そうであるならば、そのプロセスのステップバイステップにおいて必要となってくる情報が違うということは、お分かりいただけるものと思います。

 

簡単なことですが、まだ買うと決めてもいない製品について、細かいスペックなどを説明されたとしたら、どんな気持ちになるでしょうか?

 

当然のことながら、話を聞きながら心の中では「そうじゃなくて…」という感情が芽生えてきますし、もしその話が長かったりしたならば、「そうじゃなくて…」は、いつの間にか「これは買わない」に変わってしまうかもしれません。

 

このことに気付いたならば、先ほどの技術者が作った「製品開発報告書」型パンフレットをどのように改善すれば良いかが見えてきます。

 

その答えは実にシンプルです。逆からの流れに組み替える必要があるのです。

 

まず、このような使い方、用途によってお客様にこんなメリット・便益をもたらす新製品ですとお伝えし、ご興味を持っていただけたならば、それがどういった新技術で実現できているのかを説明し、それはこういった背景で生まれたものです、お値段は…という順番です。

 

これが、お客様が聞きたい情報の順序です。つまり、これが商談プロセスの中身なのです。

 

そもそも、新製品というのは、お客様が知らない製品だから新製品なのです。その知りもしない新製品について、開発秘話から聞かされたならば、ということです。

 

そして、法人営業で大切なのは、買うと決めてもらう稟議を通してもらうことです。そのための準備として大切なのは、その先にいる決定権者に届くように、営業トークが“口頭”ではなくて“紙”になっていることです。

 

つまりは、稟議書の添付資料を念頭に置いたパンフレットを持参しなければなりません。

 

もうお分かりかと思いますが、その「製品開発報告書」の中身を逆さから整え直すと、商談プロセスに沿った良い「ご提案書」になります。

 

さらに、このご提案書を優れたものにしようとしたならば、〇〇株式会社様御中、〇〇業様向け…、お客様専用に仕上げることです。

 

その製品分野でトップだとお客様に認知されるようなポジションを目指すならば、技術者は、お客様を一つの「適用例」などと考えず、「お客様のため“だけ”に作った新製品」という覚悟で商談テーブルに着く意識が大切です。

 

簡単なことにも見えますが、まずは「製品開発報告書」型の新製品パンフレットを改め、「提案書」型の営業パンフレットに作り替えることです。

 

このような思考回路、ビジネス脳を鍛えることが、技術力だけでなく業界トップと呼ばれるような事業経営の入口に立つことだということをお忘れなく。

 

そのパンフレットは提案書になっていますか?

営業シーンでは技術者脳をビジネス脳に切り替えていますか?

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