【第289話】来たる〇〇時代へ舵を切る経営の方向性戦略
この困難にあって、国の議論が遅いといった声も聞こえますが、不満を感じる要因はそれだけではないようです。
それは、議論の筋です。新型コロナウィルスへの対応議論が、「給付の金額と条件」、すなわち、経済面だけの議論になっているからです。
少しこういった状況を解説してフォローさせていただくならば、経済対策、財政投資にあたっては、その経済波及効果、使ったおカネ以上の経済効果、いわば乗数効果が期待されています。
この乗数効果とは、使ったおカネが貯金されずに消費されることで高まるため、「おカネを出しても、貯金に回ってしまっては意味がない」といった主張につながる訳です。
これはこれで必要な議論であったとして、これだけであるならば議論が片手落ちです。コロナ問題が、その先の「コロナ“経済”対策」になっており、医療体制、ワクチン開発、検査薬…といった直接的な「コロナ対策」の議論が抜け落ちているからです。
つまり、物事への対応策を練るにあたっては、直接的な実体面での議論がまずあって、それに伴う経済面での議論を併せて実施していくことが欠かせません。
打ち手としては、「マスクを支給します」よりも「マスクの生産設備投資を促進します」の方がより根源的で優れています。議論の本質に近づいていること、論点の違いをお分かりいただけるものと思います。
そういった視点を踏まえて、このコロナショックによって、世界経済が一旦沈むということについて論を俟たないとして、経営者はどのように舵取りをしていけば良いのでしょうか。
まず、歴史的に見て、経済が縮小したり、人口が減ったりといった局面は、何度もありました。そして、こういった局面で起こったことから、対応を学ぶことができます。
こういった局面において起こったこととは、後に「〇〇時代」と呼ばれるような新しい豊かで文化的な芽生えが起こっているということです。
つまり、イケイケの局面では効率性が高まり、そうでない停滞局面では創造性が高まるのです。がむしゃらに走っていてはできないようなことに、じっくりと取り組むことで、次なる新時代が築かれてきたのです。
この歴史を、もう少しこれからという差し迫った現実に生かそうとするならば、金融経済的な効率性をさておいて、もう一度、しっかりとより直接的な次元で実体経済に軸足を置いて、事業構築を考えていくことが大切です。
もう少し至近の経営戦略の方向性を考えるならば、「作る・創る」ということです。産業分類的にいうならば、一次産業、二次産業へと、一旦、立ち戻ることです。
もっと具体的に、経営の方向性を考えるならば、こういったことです。
農林水産物の付加価値を考える。これによって、日本らしい食文化を育みつつ食料自給率を高める。
モノづくりこそ日本人の生きる道と心得て、独自性ある製品を開発する。その認知によって、技術者の誇りと地位を高め、3K職場などといった間違った認識を払拭する。そして、コスト優位性から頼っていた海外生産を辞め国内生産への回帰を加速させる。
流通サービス業にあっては、流通手数料、口銭ビジネスを卒業し、自社独自の創意付加価値、加工付加価値で自社商品を創る。
これらの方向性は、ここ近年、経済が進んできた方向性とは真逆です。一次産業、二次産業から三次産業、四次産業へと経済が高度化していくという、いわばペティ・クラークの法則に反することです。
しかし、歴史に学び、立ち止まっているような時にこそ、中身、本質、文化…、後に新たな時代と呼べるような豊かな発展が起こっているという事実に立脚し、一見、逆行に見えたとしても、他社と違ったとしても、果敢にその方向を目指すことが大切です。
手数料ビジネスを卒業して、全員で付加価値を創ろうとしませんか?
創意工夫で後に「〇〇時代」と呼ばれる新たな文化を創りませんか?