【第284話】大転換期に新展開を仕込む“シタタカ戦略”の勘所
「10年後、どうなってるかなんて分かんないからね」と某社長。そう仰いつつも、未来を見据え海外展開も含めて次なる展開に余念がありません。
不確実な時代、変化の激しい時代、技術革新の時代…などと言われます。
このため、「経営計画は何年にすればいいですか?」といったご質問に対しては「長期借入れが10年なら10年です」と冗談交じりにお答えすることもあります。
当然のことながら、経営者は、どうなるか分からない未来に向かって事業を行っています。そのため、高い感度を持った舵取りが求められますし、時には根拠など乏しくても覚悟の上で「大丈夫だ」と進んで行かなければならないこともあります。
いつの時代も、攻めと守りのバランスが難しいのが経営。正解などあるはずもないことに対して、決めていかなければならない難しさが消えることはありません。
そういった不確実な狭間にあっても、やはり信頼感あふれる経営者がいらっしゃいます。この信頼感とは何なのか…ということを考えていけば、「着実に当てていく」と同時に、「倒れない」ということが信頼感の礎になっていることが分かります。
では、その信頼感が、どういったことから生まれているのかということについて、再現可能なように構造的に分解して理解しておくことが大切です。
まず、経営である以上、稼いでいかなければならないという点において、やや大きな流れの中に身を置いているかどうかということです。
例えるならば、これは大きな潮流、潮の流れといったことです。流れが大きいだけに、潮目、うねり、渦といったことに、トルクフルな対応を求められますが、いずれ中長期的にそれに耐えさえすれば、しっかり稼げるビジネスとして成り立ちます。
特に、技術・エンジニアリングといったことの潮流というのは、実のことろ10年、30年、50年…という単位にあることから、この大きな潮流には、選択の余地なく、「乗る」ことが求められています。
つまり、「着実に当てていく」とは、実のところ言葉から連想されるような小手先の短期的なことではなくて、大きな潮流に対する経営者の認識によるものなのです。
そして、もう一つの「倒れない」とは、一見、中長期的な強さを表しているように聞こえるかもしれませんが、実のところ比較的、短期の体力によっています。
例えるならば、強風、風向き、今日の天気…みたいなことです。
こういった突風にどれだけ耐え得るか、という意味で、具体的には、手元キャッシュ、自己資本比率といったことです。
少し話をまとめるならば、信頼感ある経営者は、大きな時代の潮流のうねりに身を置く覚悟で飛び込んでいながら、飛び込むにあたって今日の突風に備えています。
これを逆から見るならば、中長期的に見て、大変であろうとも稼げる大きな流れに身を置く覚悟があり、そういった攻めのファイティングポーズをとるための準備として、短期の突風に耐え得る体力を整える“シタタカ”な準備があるのです。
風向きレベルでチョコチョコと稼ぐのか、潮流レベルで勝負して文化を築くのか。トレンドといったことに対する認識の違いが、経営の本質的な成長の違いとなって現れます。
風向きレベルであれば、有り体のやり方論で対応できたとしても、潮流レベルの大きなうねりに対してはオリジナルな考え方が求められます。
もし、「これからは、○○の時代」に「君もやってみたら」が続いたとしたら、それは風向きレベルのやり方ビジネスであり、例えそれに乗ったとしても長寿には成り得ないと認識しておくことが大切です。
長い経営者人生、風向きは何度も変わりますが潮流はそれほど変わりません。だからこそ、風向きへの忍耐力を整えることを一義的な目標とした上で、その体力を活かして大きな潮流の中で勝負に出ていくという順序が欠かせません。
まずは風向きレベルに耐え得る基礎体力をつけていますか?
長いトレンド、潮流レベルでの勝負に賭けていますか?