【第266話】未来ある事業を単なる活動で終わらせないための絶対条件
「この“活動”を続けていこうと考えています」という主旨のプレゼンを耳にする機会が増えてきました。
事業の採算性というよりは、社会的要請を背景とした事業への取組み意義を中心に据えたもので、事業経営者というよりは社会活動家のようなプレゼンといえば、みなさまにも「ああ、アレね」とお分かりいただけるものと思います。
当然のことながら、事業とは単なる金儲けなどではなく社会的な意義があるものです。よって、採算性と社会性は相対するものではなくて、社会的な役割を担っていくためには採算を保っていくことが継続の条件ということです。
実際、この採算を保っていくことは中々に大変なことで、10年続けられる事業は1割にも満たないという現実があります。
前述のようなプレゼンをされる経営者に、採算性向上のためのアドバイスをお伝えすると、大抵の場合、「儲からなくても良いので」といった答えが返ってきます。そして、そういったアドバイスをしたことで、事業性に寄った人などと言われることもあります。
勘違いして頂きたくないのは、もっとカネ儲けしませんか?などとお伝えしているのではありません。その想いを継続的に実現していこうとするならば、採算を成り立たせていくことが前提条件なのではありませんか?という至極当然のことをお伝えしています。
ところで、事業経営を行っていくためには、お客様からの“共感”といったことが欠かせません。しかし、この重要なことに対する認識を間違うことで、前述のようなプレゼンが生まれます。
当然のことながら、事業経営はお客様からの売上で成り立っています。よって、この売上をどのように獲得していくのかというのが共感ということでもあります。
経営思想、事業への取組み意義への共感は極めて大切なことです。ヘンなことを考えている企業の商品を買いたいとは思いませんし、どうせ買うならば共感できる企業からということでもあります。
ただし、取組み意義への共感だけで商品・サービスを買っていただこうという経営者の意識は、とても大きな問題を抱えているといわざるをえません。
それは、「良いことをやっているので寄付してください」と言っているに等しいからです。売上とは寄付ではありません。事業に取組む背景だけを伝えて「買ってください」というのは、例えそれが素晴らしい取組み意義だったとしても、事業経営という観点からは自分勝手な言い分でしかないのです。
事業経営とは、お客様への貢献活動です。したがって、売上を生もうとするならば、それはお客様への便益提供の対価として頂戴するものだということです。
もう少し補足すれば、取組み意義への共感で募金してくださいとお願いするのと、その想いをしっかりと商品・サービスに転換して、その商品・サービスが生むお客様への便益に共感して頂きご購入いただくのとでは、創意工夫に天と地ほどの差があるということです。
経営者としてその想いを“継続的”に実現していこうと考えるならば、その事業への想いを採算の成り立つ商品・サービスに転換しなければならないのです。
そういう意味で、事業への取組み意義への共感だけで募金的な売上を獲得しようとする経営は、商品・サービスへの創意工夫を怠っているということであり、継続的に採算が成り立ち得る状況に届いていないのです。
もう少し厳しい言い方をするならば、「その意識に居る限り、その事業が世の中に認められることはない」のです。
商品・サービスへの共感ではなく、取組み意義への共感で売上を獲得しようとする経営は、お祭り的に見えます。販売活動が普及活動のイベントと化し、“活動”への共感が募金的な売上につながると考えているからです。
少し考えてみれば分かることですが、募金活動から役員報酬や従業員給与は生まれません。募金からその活動に要する人件費が引かれていとしたらどう思いますか?ということです。
取組み意義に留まらず商品・サービスへの共感を目指していますか?
その想いの力を商品・サービスへの創意工夫に転換していますか?