【第244話】新事業の立ち上がりで欠かせないビジネスのフレイバー
「知人の会社、新事業、頑張ってるんだけど…、ちょと話を聞いてあげてくれませんか?」と。聞けば大変良い新サービスのようなのですが、お客様の反応が“全く”とのこと。
こういった渾身の新事業・新サービスの立ち上がりが、全く、全然、あれあれ…という状況、お気持ちお察しいたします。
しかし、慌ててはなりません。ここで莫大な予算を使って広告を打ったりする前に、一呼吸置いてやるべきことがあります。売れない…という現実は、売れていくために必要な何かが足りていないと考えるべきことです。
もう少し補足すれば、何らかの条件が足りていないだけであって、その新商品・新サービス自体が全面的に否定されているのではないのです。
こういったお腹が痛くなるような状況にあって、稀に「お客様は分かってくれない」、「一回使ってもらえれば良さが分かるはずなのに」、「今時のお客様は何も買わない」といったことをおっしゃる経営者がいらっしゃいます。
しかし、それはいかがなものかと思います。売れたら社長の成果なのであれば、売れないことも社長の成果なのです。やはり、お客様ではなく自分の側に何かが足りていないと考えるべきでしょう。こういった状況にある場合、まずやるべきことは、売れていくために「足りていない条件」を考えることです。
反応がゼロのモノをそのままの状態でより多くの人に知ってもらったところで、結果がゼロであることは、多分変わらないのです。原因が同じであればそこから生まれる結果も同じです。仕掛け方を変えていかない限り、起こる状況も変わらないのです。ですから、まず一呼吸おいて、足りていない条件を考えるのです。
新商品・新サービスを創り上げるだけでも相当のご苦労をされてきていることは良く分かっています。多くの商品開発、サービス構想がとん挫の末路をたどる中で、ここまで来たご努力には頭の下がる思いです。
そういった意味では「やっと出来上がった」、そういった心境に至ることができていること自体は、大変な成果なのです。
しかし、それを分かった上で、あえてお伝えしなければならないことがあります。それは、もう一工夫、もう一ひねり、もう一条件…、あと一つ準備を進めなければならないということです。
ところが、ここから先の一捻りがとても難しいのです。なぜ難しいかといえば、「商品・サービスはもう物理的に出来上がっている」からです。出来上がっているのに、その上、何をしなければならないというんだ…と。
買う側になって考えれば分かることです。他との違い、納品までの期間、支払い方法、保証…、購入判断のために欠かせない条件提示ができているでしょうか。購入判断に欠かせない全体について条件を整えていくことが大切です。
「まず聞いてもらえれば提案します」は、“提案”ではありません。お客様の側から見れば判断に必要な条件が整っていないのですから、商品・サービスが「出来上がっていない」と見えてしまうことは容易に想像していただけることと思います。だから、反応が“全く”なのです。
そして、こういった契約成立に向けた準備を進める中でその商売の栄枯を分かつのは、最終的にそのビジネス構築に関する“意志の表明”です。どう考えてこの商品を開発したのか、この商品・サービスを通じてお客様にどういった状態をもたらそうとしているのか、そのための新しい着眼は…という経営者・開発チームの意志です。
この開発意志は、商品・サービスの物理的な特性ではないため、「そんなこと」とお思いでしょうが、そこが違います。どんなビジネスも最終的に匂い立つものは、それを創った「人」です。
そしてこれは、世の中がこうだからこういったビジネスが必要だ…といった、第三者的なものではありません。世の中がどうであろうと、自らの意志を持って、主体的に取り組んでいることが大切です。
「人」がビジネスにフレイバーをもたらします。香り、風味…の違いは「人」の違いです。そして、このビジネスのフレイバーは、購入を検討モードにするトリガーでもあるのです。
御社の新事業はどんなフレイバーですか?
渾身の新事業、主体的な魂の叫びがフレイバーとなって匂い立っていますか?