【第243話】世の中が幸せになる高収益実現の一丁目ゼロ番地

「そうは問屋が卸さない」。これは、商品の流通経路にあって卸売業(問屋)が実力的な立場を持っていたことを教えてくれています。

 

そもそも、商業とは、農作物や織物などを交換することが始まりです。農業が中心の時代に、農地を持たない人たちが農作物などの仲介を行ってきました。そして、いつしかその流通経路を握ることで、商売上、生産者よりも強い立場を手に入れていったことが伺えます。

 

今の時代になっても、生産者にとって流通・販売の経路は極めて重要なことであり、自社の生死を握る存在でもあります。そのことから、本来ならば「販売拡大」と呼ぶべき取り組みが「販路開拓」と言われたりするほどです。

 

ところが、商業といっても商品を右から左…で成り立つ時代ではなくなりました。とある機械商社では、事務所の二階で設計図面を書いています。今や商品の取付けについては、この商社さんナシでは立ち行かないという状況にあり、商社でありつつも製造メーカーを支える立ち位置となっています。

 

流通業は、流通在庫機能、金融機能といった社会的な役割で語られることが多いのですが、生産者から見れば自社商品の販売代理を期待しています。商業の成り立ちから見ても、生産者が作ったものを仲介し流通させてきたことを考えれば、商業は生産者の販売代理、生産者寄りの立ち位置であった訳です。

 

しかし、昭和も進み、世の中にモノが足りてくると、モノがあるだけで売れていく時代では無くなってきます。売れない時代…、商業はある選択に迫られます。

 

商業は生産者の販売代理である一方、逆から見れば消費者の購買代行でもあります。すなわち、商業として、生産者側に立つのか、消費者側に立つのかという、極めて重大な選択に迫られました。そして、商業は、これまでの生産者側の立ち位置を捨てて、消費者側の立場に移行しました。

 

その後、流通革命と呼ばれる「価格破壊」が長く続いています。今振り返って思えば、ここ20年で見てきたディスカウントストア、カテゴリーキラー、ファクトリーアウトレット、オフプライスストア…、といった新業態は、全て価格訴求型の業態でした。

 

そして、製販同盟の取引系列も、流通業の価格破壊で生産者のコストダウンが限界に到達したことで、消滅の末路をたどっています。もちろん、製造業においても企業努力は必要ですが、物理的な材料を取り扱う以上、限界というものがあります。

 

そもそも、利益・付加価値というのはどのように生まれるのか…を考えた場合、ちょっと古い流通モデルですが、製造業→卸売業→小売業→消費者とすれば、製造業に起点があることは明らかです。そして、この流通経路全体の利益、付加価値は、製造業の原価と消費者の購買価格の差であることも分かります。

 

少し話は逸れますが、ミクロ経済学で、利益の概念は余剰として知られています。生産者と消費者の取引において、生産者側は売れた価格と原価の差が余剰、消費者側は商品価値と購入価格の割安感を余剰と考えます。

 

この考え方から分かるとおり、消費者に「価値」を伝えることなく「価格」だけで売ればどうなるか…。その答えは明らかです。消費者余剰は消滅するということです。つまり、価格で売るということは、価値を伝えていないので消費者余剰がゼロ、販売過程で付加価値を生んでいないのです。

 

このことはすなわち、価格売りの小売業が仮に利益を得ているとすれば、それは本来、生産者の利益であるはずの部分から得ていると言わざるを得ないということです。消費者側に立ちながら生産者からだけ利益を得る…、それはどう考えてもおかしなことです。

 

昨今、再び、商品価値をしっかりと訴求して至極妥当な価格で販売を行う流通小売業が躍進されています。これは大変喜ばしいことです。

 

そして、こういった躍進流通業に共通することがあります。それは自社商品を持っているということです。「価値」を売ることの起点に「作る」があります。そのことをご存知だから、自社の付加価値を生む独自商品を自ら「作る」といっているのです。

 

世の中を幸せにするためには、「作る」と「売る」の双方で付加価値を生み出す努力が大切です。そして、足りてる時代、それを実現していこうとするならば、価値の起点である「作る」に意識を寄せていくことが大切です。このことが高収益実現の一丁目ゼロ番地です。

 

自社の利益は、ご自身の付加価値活動から生まれていますか?

世の中全体の余剰を最大化しようとしていますか?

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