【第236話】ビジネスの“違い”を生み出すための思考軸
「売上は買うことができる」と言ったならば、どのようにお感じになられるでしょうか?
「そんなことが出来れば苦労などしない」と、こめかみが怒張するでしょうか。それとも、「あのことね…」と口元をほころばせるでしょうか?
どちらにせよ、もう少しお話を聞いてください。経営者であるならば、ご自身の決定次第で売上を増やすことは可能ということをお伝えしています。
例えば、家賃が一室あたり10万円で20室のアパートを2億円で建てたとします。満室であれば、10万円×20室で月々200万円の家賃収入、年間で2400万円の売上ができあがります。
これは言わば、2億円で年2400万円の売上を「買った」ということです。満室にならなかったとしても入居分は家賃収入が生まれますから、そういた意味で、経営者は売上だけならある程度買えるのです。
売上に意識があると、どうしても売上を買うことが先行して、「やってみなければ分からない」、「走りながら考える」といったことで事業を始めることが優先されてしまい、採算、利益の建付けが後回しにされがちです。
売上を増やすだけなら、ある程度おカネで買うことができてしまうのですが、利益を増やそうとするならば創意工夫が欠かせません。このアパートでいうならば、アパートの建設時点で、潜在的な入居者にどのような生活スタイル、豊かさ、利便性、…といったことを準備できているかにかかっています。
経営者の手腕とはここにあります。強い事業を創るとは、その中身を創ることに他なりません。アパート経営者が試される手腕とは、アパートを建てる技術知識やその資金調達力ではありません。事業の核となる価値創り、家賃を支払う入居理由創りにあります。
言うまでもなく、この“違い”を生み出すのは簡単ではありません。そのため、“違い”をどのようにして創り出そうとするかという場面になると、経営者によって端的に二つの“違い”の創り方に分かれます。
その二つの創り方とは、「やり方」と「考え方」です。「やり方」を探す社長というのは、どこかで上手くいっているアパート経営を探して、その「やり方」を導入しようとします。
なぜこういったアプローチになるかといえば、アパート経営には上手くいく「やり方」があって、それを知りさえすれば「オレにもできる」と考えているのです。
これを逆から見れば、経営の成否は「やり方」次第だと考えているということです。つまり、他社と同じような商売を「もっと上手くやれば成功できる」と考えているのです。要は、他社との“違い”を同じ「やり方」の「要領」に求めているのです。
確かに最終的には要領が悪いよりも良いに越したことはないのですが、独自性の高い事業の“違い”を生み出そうとするならば、「やり方」のレベルだけで本質的な“違い”には仕上がりません。
もう一つのアプローチである「考え方」に取り組む社長というのは、他社の成功事例から表面に見える「やり方」を観察して、なぜそうしたのか…に意識を向けます。
なぜならば、その「考え方」さえ理解できれば、同様の成功に至ることができるはずだと考えているからです。
実際、とあるクライアントの社長はハッキリと「考え方が知りたい」と仰います。こういった社長は、経営の本質的な違いが「考え方」にあることを本能的に理解しておられます。このため、多少時間が掛かったとしても、事業をいずれ一定の成功まで持ち上げることができるのです。
一方、経営を「やり方」で考えている社長は、少し上手くいかなくなると「やり方」を変えようとします。上手くいかなくなっている原因が「考え方」にあるにも関わらず、「やり方」を変えたところで望む結果を得ることはできません。
ビジネスに本質的な“違い”を生み出そうとすれば、「考え方」のレベルで準備することが不可欠です。
ビジネスの“違い”を生む事前の準備を重視していますか?
「やり方」に留まらず「考え方」で勝負しようとしていますか?