【第211話】経営成長を早回しする2つの方法とバランス

「借入を増やしてでも、この新事業に挑戦したいのですが、どう思われますか?」

 

これまでにもお伝えしてきたとおり、経営にリスクは憑きモノです。よって、どのようにリスクを取って、それがどれほどの成長リターンを生む可能性があるのか…、そもそも危ないことに手を染めるのですから、その見極めと事前の策が大切です。

 

上手くやられている企業は、必ず商品価値、収益構造、販売方法について事業全体を一貫性高く構築する努力をされています。そのような準備をしっかりと進めた上で、ぜひ積極果敢に新事業に取り組んでいただきたいと常々お伝えしています。

 

それよりも、このご質問にあって判断が難しいのは「借金を増やしてでも…」のところです。経営の舵取りで難しいのは実体の事業面だけではありません。この資金調達への態度がなかなか難しく、これこそが結構な曲者です。

 

資金調達面の決定がなぜ難しいかといえば、基本的に正解が無く、経営上のポリシーの問題であることに加えて、経営者にとって麻薬ともいえるような極めて魅力的な魔力を持っているからです。

 

まず体系的に整理しておきたいのですが、経営を本成長させていくためには大きく2つの方法があります。

 

まず一つ目の方法が「能力を高め、その応用で事業範囲を拡大していく方法」です。技術力を高め、商品力に応用し、新たな提案を世に送り出していく…という「実体的成長」です。いわば成長戦略のオモテ面といえるでしょう。

 

もう一つの方法は「外部から資金を調達して、設備投資や他社を買収することで売上を拡大していく方法」です。借入や出資でまず資金を調達して、その資金力で売上を積み増していく…という「金融的成長」です。会社の外側からは見えない戦略であり、これはいわば成長戦略のウラ面といえる方法です。

 

もちろん、事業経営ですから、あらゆる手段を駆使して世の中への貢献度を高めていくことが継続企業の条件です。だからこそ、こうした状況ではポリシー、すなわち、どのように成長発展を進めていこうとするのか…という意志そのものが常に試され続けます。

 

自己資本比率が高い方がいい、といったお話は、いわゆる財務の安全性ということで教科書的にいわれていることです。しかし、実際の経営はそんなに単純ではありません。

 

自己資本比率が高ければ、確かに潰れにくい企業ではあるものの、例えば株式の譲渡では株式の評価額が上がってしまうため相続が難しくなってしまう、延いては事業継承が…、といった実務上の課題も山積します。

 

一方、仮に自己資本比率が限りなくゼロ、借入だけで経営をしているとすれば、その経営は、誰のために働いているかといえば、もはや銀行のためと言わざるを得ません。

 

経営は実体面ではお客様のために働いていますが、金融面では資金提供者のために働いているという両側面を持ち併せています。このため、自己資本比率、逆に言えば借入への依存度というのは、経営の魂の問題なのです。

 

税理士さんなど、金融面からのアドバイスをご専門にされる方の中には、「銀行から借りられるだけ借りておいて、現預金を増やしておいた方が良い」といったことを言われる方もいらっしゃるようです。

 

もちろん、事業経営にあたって手元の現預金は、少ないより多い方が安心です。よって一見正しいアドバイスのように聞こえますが、それは根本が違います。企業に現預金を増やすのは実体事業から生まれる粗利、創意工夫による付加価値です。

 

経営者ですから、「借りられるだけ借りておいて…」と、時に面の皮が厚いことも大切ですが、それよりも本質的なことは実体面での成長努力です。

 

成長発展を目指せば、「実体的成長」と「金融的成長」を上手に組み合わせていくことが欠かせないとして、問題はどちらに軸足を置くかということです。魂の問題です。

 

借金をして堅実な事業で“資金運用”などしている場合ではありません。例え最初は小さかったとしても独自の事業で粗利を生み、その資金を再投資して成長を歩む…、そういう実体面に軸足を置いた成長意識が大切です。

 

「金融的成長」よりも「実体的成長」を目指していますか?

そのために御社にしかできない独自の事業構築に挑戦していますか?

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