【第210話】商売成功に欠かせない準備、ハード・ソフト、もう一つ。

新事業を成功に導いている某社長は後輩経営者にこう言います。「絶対にやると決めてアンテナを上げていると、アイデアは1年くらいで見えてくる」と。

 

これは、経営者としての本質を突いていて格言とさえ思えてきます。何が本質的かといえば、常に「考えている」ということです。ご自身の定義する“成功”をご自身に出題し、それを解いていくために「考えている」のです。

 

大切なことなのでもう少し補足すれば、「どこかにあるまだ知らない答えを探している」のとは根本が異なる、ということです。よくお見掛けしますが、「次なる儲かりのネタ探し」を「考えている」と…、これは残念ながら勘違いです。

 

自分で考えて答えを出すために知ろうとすることと、知ることで何か答えが見つかるかもしれないと考えていることでは、決定的な違いがあります。主体性がどちら側にあるのかということです。

 

主体性を持って問題自体を自分で設定した場合、それを解く方法は、先人たちの知恵を集結しながら自分で考える以外に到達する道筋はありません。

 

この道は楽ではありませんが、仮に多少の時間を要したとしても、内なるところから検討が始まっていますから、次なる打ち手はいずれ自ずと見えてきます。これは経営者という生き方をしていく上で極めて大切な思考パターンです。

 

ちなみに、事業拡大を準備していくにあたって、「この設備を導入すればコレが作れるようになるんです」という説明をお聞きすることがあります。この際にはこうお伝えしています。「そうであれば、その設備を導入すれば他社でも作れるということですよね」、「そうであれば、受注は価格競争になりますから、仮に売上にはなったとしても、設備や人を抱えるリスクに見合ったリターンは生まれないのではありませんか」と。

 

設備投資を止めようなどと申し上げているのではありません。むしろ積極的に進めていくために、今のうちに勝算をしっかりと高めておきませんか、とお伝えしたいのです。

 

そうお伝えするとこう続きます。「ハード面だけじゃダメということは分かっているので、新たな設備の導入に合わせて、生産マニュアルなどソフト面の整備も進める予定です」と。

 

当たり前のことですが、経営は効率化の取り組みだけで立ち行くものではありません。確かにハードとソフトが揃うことで最低限、事業を動かしていくことは可能といえるでしょう。ですが…、ということです。

 

例えば、「スーパーコンピュータ」があって、「凄腕のプログラマー」がいて、果たしてそれだけで商売が成り立つでしょうか。

 

不思議なもので、商売の準備をハードとソフトという考え方をしてしまうと、大切なコトが抜けて、経営が日常業務の運営レベルに堕ちやすくなります。

 

どこかの公共施設のように、立派な建物と派手なイベント、ハード・ソフト、必要なコトが足りているはずなのに商売として上手く回らない…、これは商売として大切なことが足りていないからに他なりません。

 

商売の準備としてハード・ソフトは大切ですが、それ以上に大切なことがあります。それは、経営者が考えてたどり着いた主体的な「ミッション」です。

 

これは、こんな風に役に立ちたい、絶対にこうした方がいい…、お客様を益し、世の中を進歩発展させていくための御社なりの貢献意志です。

 

誤解なきように補足すれば、これは顕在化している社会課題の解決といった上から目線な取組み宣言などではなく、さらに申し上げれば、「魅力を発信」とか、「良いモノなので紹介したい」といった外野からのお手伝い的な軽々しいものでもありません。

 

「ミッション」は、あくまでも内発的で主体的な思いから生まれる貢献意志です。

 

そして、お客様が購入できる具体的な商品・サービスに完成させるという事前努力を伴って、はじめてその「ミッション」を果たしているといえます。

 

言うだけなら誰にでもできます。掲げたその「ミッション」を製品・サービスとして具体化するという事前の投資的・開発的努力が大切です。

 

主体性を手放さずに考えていますか?

御社の「ミッション」を製品・サービスにまで仕上げていますか?

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