【第201話】本物の成長に「自社商品」開発が欠かせない理由
「実績が次の仕事につながるので営業したことはありません」というご挨拶を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。
みなさまは、これを聞いてどう思われますか?
十中八九、口では「素晴らしいですね」といいながらも、この自慢気な話しぶりにどこか心配を覚えることでしょう。
その心配の正体は、「良いシゴトさえしていれば、これからも仕事がもらえるの?」、「それじゃあちょっと見通しが甘いんじゃない?」、「ホントそれで大丈夫?」という先輩経営者としての親心みたいなものでしょう。
例え良いシゴトをしていたとしても、もっと安くそのシゴトをやってくれるところが出てくれば、お客様はそちらへ鞍替えしてしまうでしょう。あるいは、そのシゴト自体がいずれ無くなってしまうかもしれません。
不思議なもので、経営者のお話というのは「どこまでを見ているのか」という世界観が現れるものです。
例えば、自社を「金型、鋳造、熱処理、切削の一貫体制」で「品質、価格、納期で頑張ります」と説明される社長というのは、言うならば「お客様の代わりにその機能をこなせます」という機能のお話をされています。つまり「代行型ビジネス」ということです。
一方、同じ製造業であっても、「開発、設計、製造、検査、サービスの一貫体制」で「御社のビジネスをサポートします」は、お客様のビジネスをもっと高めることができる体制のお話をされています。つまり「付加価値型ビジネス」になっています。
このお二方の社長が見ているのは、同じような商売をしていたとしても、「御社の下請けとして、その機能を肩代わりします」というのと、「御社のパートナーとして、発展を支えます」というくらい意識範囲に違いがあるということです。
受注の仕様を満足させるのか、お客様を満足させるのか…。
ビジネスとして、そして経営者の見据えている世界観として、どちらがチャレンジングだとお感じになられるでしょうか…、ということです。
では、こんな分かりきったことを、なぜ優秀であるはずの経営者ほどできないのか…、難しいのか。
その理由は、シンプルです。世界観を広めると「痛み」を伴うからです。
自社にとって裁量の範囲が広がり自由度が増すと、その責任も重くなることに対して「痛み」が増すのです。
さらに、代行型ビジネスから付加価値型ビジネスを見据えていく間にある、もう一つの大きな「痛み」があります。
それは、「自分たちをさらすこと」です。
というのも、代行型ビジネスというのは「相手の答え」であり、付加価値型ビジネスというのはいわば「自分たちの答え」だからです。
ですから、自分たちが考えたとおりにしか出来上がらないという意味で、企画開発を通じて「自分たちをさらすこと」になるため、「自分たちであること」への勇気が試されるのです。
弊社では、例え小さかったとしても「自社商品」を持つことをお勧めしています。それに自分たちで「価格」を付けて販売することまでを含めて、鍛錬していくことが大切です。
本物の成長というのは、他人に創ってもらうものではないはずです。仮に下請的事業から出発したとしても、例え売上の大方が下請けだったとしても、小さくても「自社商品」を開発し育てていく努力を諦めてはなりません。
その「痛み」は、本物の成長発展をもたらす強さと精神性を宿すために欠かせない登竜門の通行料です。
自社商品を創ろうとしていますか?
代行ではなく付加価値に焦点をあてていますか?