【第2話】強い事業者に共通する「フェノタイプ」な工夫とは
月に数回程度ではありますが、社長方、経営者方が集まる会に参加させていただく機会があります。こういった場は富に個性的な方々が多く、とても楽しい気持ちになります。
人や企業にはそれぞれ個性があります。同じ様なビジネスであっても匂いが違うのです。仕事柄、多くの事業場にお邪魔いたしますが、そこで感じる空気感は、同じような業種・業態であっても、極めて違います。業種・業態とは、提供する製品・サービスやその提供の仕方による分類ですが、その背景にある経営意識がこの空気感の違いを醸し出している訳です。ですから、違うのは当然といえます。
動物行動の分野では遺伝子レベルとその結果としての表現や行動を区別して考えます。ジェノタイプとは遺伝型のこと。企業でいえば経営哲学であり理念、社風や価値観とも言えます。中小企業の場合であれば、社長ご自身の考え方や生き方でしょうか。フェノタイプとは表現型のこと。ジェノタイプは外から見てもなかなか分かりませんが、それが見た目として分かるように表れている型、主に体形などの形質のことです。更に、ビーバーが木の枝で作るダム、クモが作るクモの巣の様に、誰かに教えられることなくできる表現の型は、延長されたフェノタイプと呼ばれます。企業でいえば、提供している製品・サービスの機能部分に加えて、この企業がやるとこうなるという、同じ様で同じじゃない“匂い立つ”部分と言えます。
企業は、技術力やサービス品質の向上、経営知識の習得など、能力の向上・拡大に必死で取り組んでいます。こうした、土台となる習得物も成長拡大に不可欠であることは間違いありません。しかし、それら土台となる能力を売れるカタチへと転換しなければ、商売にはなりません。できた・売ろうとした・売れない・撤退。。。とならないようにするためには、能力を売れるカタチに転換するプロセスで、我々が作るとこうなる、という個性表現的な、すなわちフェノタイプな工夫が極めて重要です。
では、フェノタイプな工夫は、どのように生まれているのでしょうか。個性表現が上手いな、と感じる経営者の方にお話を伺うと、「苦肉の策だった」という答えがよく返ってきます。ご本人達は笑い話のように話されますが、これがとても重要なポイントだと考えています。つまり、そのビジネスを計策していた当時、お金が無い、人がいない、設備がないなど、様々な制約条件の中で突破口を探してとことん考え抜いた結果、「苦肉の策」というフェノタイプな工夫にたどり着いているのです。そしてそこに一点突破で集中したから、今がある訳です。初めからカッコいい策など稀で、何とかしようという意志をもって突破口を探した結果、フェノタイプな工夫が「苦肉の策」となって現れている訳です。他の経営者が成功したフェノタイプを表面的にマネだけしても、上手くいかないのは当然な訳です。
経営者方の多くが自然体に見えるのは、自らのジェノタイプに従い、フェノタイプな商売のやり方をしているからでしょう。そして、提供している製品・サービスが十分に自身を表現してくれているので、無理やりキャラクターを作り上げたり、派手なファッションに身を包む必要も無い訳です。
弊社では、新製品・新サービスの開発や新事業の開発に携わるプロジェクトを、そのチームと一緒に推進していくコンサルティングを行っています。この際、最も留意しているのは、フェノタイプをなるべく早い段階でイメージしていく、ということです。これによって売れる化できるし、以降の準備・開発での手戻を劇的に減らし、より短期間で販売開始、営業開始へと結びつけることができるようになります。
プロジェクトの推進にあたっては、“違い”の創出を自社のジェノタイプに求め、それをしっかりと表現するためのフェノタイプな工夫を怠らない、という意識が大切です。
御社の次の「苦肉の策」は何でしょうか?