【第193話】キナ臭い商売に足を踏み入れないための一線の引き方

ビジネス、事業、商売…、こういった言葉で自社の生業を括ることに抵抗感がある。そんな、社長、経営者がいらっしゃいます。

 

これは、自社の経営に対する「大義」や、他社との違いに対する「誇り」といったことに起因します。

 

あるいは、こういった言葉が、ビジネスが何か「おカネ」目当ての活動ように聞こえるといったことが、その抵抗感の根底にあります。

 

事業経営にとって、おカネは実態を現すとても大切な情報ですが、それが目的化していない…、この感性は経営者にとって、とても大切なことです。

 

昨今、特に若い経営者の集まりなどにお呼びいただいた際に感じる違和感は、この「おカネの目的化」にあります。

 

「ビジネスというリスクを負うのだから、そりゃ大金持ち目指さなきゃ割に合わないでしょ」といった感覚です。人生の損得勘定でビジネスを見ているのです。

 

こういった場に共通することがあります。それは例えば、企業を時価総額で測ろうとする、IPOが経営目的に据えられている、そして、既存社会やヒエラルキーに対する拒絶観といったことです。こういった経営スタイルは仮想的にでも株価を吊り上げなければならないので、妙に壮大な未来像が語られます。

 

今時の経営者にとって、企業会計を超えたフィナンシャルなテクニックの重要性が高まっていることは全く否定しません。むしろ、新事業にあたって子会社を作ってリスクを切り離したり、単なる負債ではなく転換社債で資金を集めたり、状況に応じて量や価格を変更できる条項を契約に織り込んだり…といった工夫はむしろ積極的に行って欲しいとさえ思っています。

 

ここでは「事業経営にとっておカネは一つの目標であったとしても目的足り得ない」ということをお伝えしたいのです。

 

やはりビジネスは競争の世界です。選ばれるか選ばれないか…の瀬戸際において、「この仕事が儲かりそう」と考えている経営者と、「この仕事で死ねたら本望」と考えている経営者が対峙したら最後の最後どちらが強いでしょうか、ということです。

 

一つの会社を上場に導き、その後立ち上げた企業も売却して、一度はビジネスから引退した某社長は、「これまでおカネのために働いたことは一度もない」と言い切ります。

 

お客様のために、技術発展のために、未来のために…と働き続けているうちに、おカネ面でも人も羨むような成功を手に入れられています。

 

事業経営において追い求めていきたいのは、「付加価値」への創意工夫です。材料を加工して製品にしたり、欲しい人のところに販売したり…、ビジネスと呼べるのはこういった「付加価値」視点の創意工夫が根底にあるからです。

 

ところが、創意工夫に尽きたその先が怪しくなってきます。それはどんなことかといえば…、直接的におカネを集めようとし始めるのです。

 

もちろん、タダでおカネが集まるはずがありませんから、イベント、組織化・会員化、普及的販売活動…、こういった風に形を変えて「集金」しようとし始めるのです。

 

特に、一定程度いまの事業が成功しつつも限界を感じていたり、社長経験が長くなってきたり、人心掌握に長けてきたような時期が危険です。人を使うのが上手くなってくると、その人たちを使って直接的におカネを集めようとし始めてしまうのです。

 

そして恐ろしいのは、創意工夫による本物のビジネスを創るのに比べて、おカネを集めるためのテーマ探しは意図も簡単だということです。さらに、自分より弱い人たちに売る・集めるのですから販売も容易です。

 

商売にキナ臭さが漂い始める一線とは、創意工夫の中身が「付加価値」にあるか「集金」にあるかの違いです。例え「創意工夫」が辛くなったとしても、この一線を絶対に超えてはなりません。

 

お客様に「付加価値」を販売していますか?

創意工夫で売上利益を創ろうとしていますか?

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