【第186話】売れる匂い・儲かる味

「できました!どうですか?宮口さんの言っていることがやっと分かりましたよ~」と更新した企画書を嬉しそうに見せて下さるくださる社長。

 

ある商品アイデアについて「もう一ひねりしませんか?」とお伝えしてから早半年、何度かの「もう一ひねり…」を経て、アイデアが新ビジネスとして発射できそうなコンセプトへと昇華されました。

 

「ここまで来て、あの頃を振り返って、あのままで販売していたら、どうなったとお感じですか?」とお聞きすれば、「そりゃ、売れなかったでしょうね」と苦笑い。

 

新商品をカタチにすることだけでも大変なことは重々承知しています。ですが、それを「売れる儲かる商品」に仕上げるためには、「もう一ひねり」が大切なのです。

 

ところが、この「もう一ひねり」がなかなかに厳しいという現実があります。なぜならば、経営者や開発メンバーは、これまでにすでに相応の努力を払って、新商品をカタチにしてきているからです。

 

こうした状況においてこそ、経営者の度量が見え隠れします。率直にアドバイスを聞こうとする経営者と、いやこれは…と食い下がる社長。

 

この姿勢を翻訳するならば、アドバイスを聞こうとする社長というのは「もう少しの努力でもっと売れてもっと儲かるならやってみたい」と仰っています。一方、食い下がる社長というのは「もうこれでいいでしょ、勘弁してよ」と仰っています。

 

大抵の場合、不思議なことに「それは例えば…」とアドバイスにヒントを見出そうとされます。これこそが経営者が経営者たる所以、ビジネスへの純粋な好奇心がそうさせます。

 

すごく単純なことですが、商品・サービスさえあれば、売れる可能性はゼロではありません。小売店舗に陳列されている「売れないだろうな」という商品も、聞けば「たまに売れるんです」という何とも不思議な答えが返ってきたりします。

 

当たり前ですが、新事業や新商品開発というのは、今よりも「もっと売れるコト」、「もっと儲かるコト」を創っています。

 

それと同時にとても大切なことは、「売れる・儲かる」の両方を一緒に企画するということです。売上を創ることも大変ですが、それ以上に大変なのは利益を創出することの方だからです。

 

あえて、わざわざこう申し上げているには理由があります。それは、経営において売上は買うことができますが、利益はそうではないからです。

 

例えば、店舗を増やせば売上は増えるが利益が増えるかといえばそうではない、M&Aすれば売上は増えるが利益が増えるかといえばそうではない、広告を打てば売上は増えるが利益が増えるかといえばそうではない…といったことです。

 

話を元に戻せば、商品さえあれば売上が立つ可能性はあります。ですが、それでしっかりとビジネスを継続できる利益が創出されますか、というのが「もう一ひねり」をお願いしている理由ということです。

 

商品が売れていくための創意工夫というのは商品の特徴づけを改善することで、売れる匂いを高めることが可能です。つまり、やや物理的なことです。

 

一方、利益が出ることというのはお客様の支払い意欲によることです。その商品に原価以上の価値を見出したということです。つまり、やや心理的なことです。

 

この心理的なことというのは、例えるならば「好み」という味のようなものです。購入に先立ち「好みの味だ」と感じていただけたからこそ、創意工夫への対価として原価以上の価格でお買い上げいただけるのです。

 

人や企業には味の好みがあります。だからこそ、ビジネスの“テイスト”づけが大切であり、それはお客様の問題ではなく、こちら側の問題なのです。

 

その際、最も気を付けなければならないのは、フェノタイプ(表現型)であるということです。その企業らしさ、その社長らしさ…、こういったところとの一貫性が崩れてしまってはなりません。売上への迎合が一貫性の喪失を招きます。そこに堕ちてはなりません。

 

売上と利益を一緒に創ろうとしていますか?

御社のビジネスは“テイスト”を醸し出していますか?

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