【第187話】独自の成長発展をもたらすロングヒットの生命線

「当社は、〇〇として創業して、△△へと発展し、現在は××として成長してきました。そして、これからの10年は…」。

 

自社の成長を軌跡として語ることができる社長には絶対的な強さがあります。ここでいう強さとは「自ら堕ちない強さ」とでもいうのでしょうか。

 

軌跡を描ける――、ということの意味は、経営者として自社の生い立ちからくる得意技を心得ており、その鍛錬と応用で生き延びていく賢さを持っている証拠です。

 

ですから、こういった社長というのは、外部環境の影響を受けて短期的に売上の増減があったとしても、永い目で見れば事業の核となる本質的な強さをしっかりと育てていくことができるため、そう簡単には「堕ちない」という強さがあります。

 

あえて、「堕ちない強さ」をお伝えしているのには理由があります。事業経営において、新事業、新商品、新展開…、「次なる打ち手」というのは“攻め”であると同時に“守り”でなければならないという極めて大きな矛盾を抱えているからです。

 

当然のことながら、打ち手を一歩間違えば堕ちます。堕ちないためには、攻めと守り…、一見矛盾したことの間で、どうやって筋を通していくのかということが、実はとても大切です。

 

ところで、我々が目指しているのは、商売を商売として成り立たせていくことです。そして、できれば永く収益に貢献してくれる事業を創ることです。そう考えれば、実に単純なことですが、あることに気が付きます。

 

それは、「永く」ということのビジネス上の意味です。つまり、新商品・新サービスがヒットしたならば、その証としていずれ「定番」になっていくということです。

 

これを逆から考えれば、新事業の構築にあたっては、「華々しいヒット」を狙うというよりは、むしろ「存在感ある定番」を目指すようなイメージが最初から大切ということです。

 

そして更に、「永く」という視点で「定番」づくりを考えるならば、もう一つ気付くことがあります。それは、「永く在る商売」ということは「もう在る商売」である可能性が高いということです。

 

周りを見回していただきたいのですが、永い商売というのはどんなものでしょうか。その商売の根本は変わっているでしょうか。実は古くからの商売が手を変えながら存続していることがほとんどだということに気付くはずです。

 

つまり、テクノロジーの進歩発展がそのスタイルを変貌させているだけであって、ビジネスの根幹部分というのは、実はそれほど変わっていないのです。

 

ですから、商売を一定程度、成功させたいと考えるならば、例え古臭いようであっても、根源的なニーズに起点を持つことが欠かせないということです。

 

だからといって、成功している商売をパクって、そのお裾分けに預かろうといったことをおススメしているのではありません。商売の根本というのがシンプルだからこそ、その商売を誰がやるのかをお客様は見ているということをお伝えしたいのです。

 

話しを戻せば、攻めるのか、守るのか…、実は、「守るのが先」ということです。「次なる打ち手」の展開にあたり自社が守っていくものは何なのか。それを見失うから堕ちるのです。

 

独自路線で事業の成長発展を歩もうとするということは、攻めているようでありつつむしろ守りながらその範囲を堅実に拡げていくイメージです。これは極めて地味で継続的な努力であって、巷で騒がれるようなキレイでカッコいいことではありません。

 

「新事業に挑戦」というのは「ハワイでスカイダイビングに挑戦」とは訳が違うのです。自社の本質的な強さを守りながら拡げていくための極めて地味な闘いなのです。

 

だからこそ、例え苦しかったとしても変なことには手を出さないのが得策です。守るべきものを失えば堕ちます。攻めたつもりで堕ちる…、歴史に学ぶことが大切です。

 

ロングヒットを持つビジネスとは、誰に何に伸るか反るか…、そういった他力本願なビジネスではありません。自分たちでその商売を成り立たせ続けていこうとする、極めて内発的で自力本願な取組みだということを忘れてはなりません。

 

次なる打ち手は商売の本質に立脚していますか?

まずは守るコトを決めてから攻めていますか?

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