【第167話】独自性を発揮する投資力の高め方
突然ですが、御社の研究開発費はどのくらいでしょうか?
会計上の勘定科目として研究開発費になっていなかったとしても、例えば、次の商品・サービスや事業展開を考えるために必要な情報収集や試作・テストなどに、どの程度の資金や時間を充てているでしょうか。
あるいは、営業販促費はいかがですか?
既存のお客様へのフォローアップや、新規のお客様を獲得していくために、どういった人員配置や予算が張り付いているでしょうか。
多くのケースでお見受けするのは、こういった先行投資系のおカネが限りなくゼロという企業です。
弊社では、「経営とは投資です」と常々お伝えしています。先におカネが手元から離れて、後から戻ってくる――、という一連の流れということです。
「ウチも頑張って投資している」といったご意見が聞こえてきそうですが、それはもしかすると、設備投資、ハードに対する投資のことではないでしょうか。
設備というのは能力を買ってくることであって、その能力をいかに事業に仕上げていくか、採算に乗せるか…ということとは、実は少し議論が違います。
ここでお伝えしたい投資とは、今の能力であっても、例えそれがローテクであっても、その能力をいかに売上・利益に転換してくかという“応用力”に対する投資ということです。
多くの経営者方とお付き合いする中で感じるのは、投資という感覚に二つの種類があるということです。
一つ目は「仕事を貰うための投資」。もう一つは「仕事を創るための投資」です。
「仕事を貰うための投資」とは、例えば「この設備があればこういった仕事ができるんです」といった理由でご説明されます。これは、言い換えれば「この設備さえあれば〇〇の仕事が貰える」ということです。
こういったご説明に対しては、いつもこうお伝えしています。「能力をそのまま売っている限り、独自性も利益性も高まりません」と。
少しお考えいただけば分かることですが、設備さえあれば他社にでもできる仕事というのは、何の違いも無いのですから、結局のところ価格勝負になってしまうということです。ですから、独自性も利益性も高まらないのは当然のことです。
とても大切なことなのでもう少し補足すれば、「ビジネスとは、核となる能力を、お客様のために“応用”することで付加価値が生まれている」ということです。能力そのものの高さもさることながら、その“応用力”にこそ付加価値の源があるのです。
そうご理解いただければ、「仕事を創るための投資」がどういったことなのか…、お分かりいただけるものと思います。
「こういう製品や提供方法ができれば、付加価値が向上して利益性が高まる」といった文脈が大切ということです。つまり、能力を製品・サービスや提供方法に転換するという、付加価値の構想、“応用”の仕方がまずあるということです。
経営の独自性を高めていくためには、この付加価値の構想、すなわち、能力をお客様のためにどのように“応用”していくか…、という創意工夫への投資が欠かせません。
設備投資のように能力そのものを獲得するための投資も大切ですが、それ以上に重要なのは、そういった能力をどのようにお客様のために使っていくかという“応用力”の向上に対する投資だということです。
「仕事を貰うための投資」は、経済が成長する局面では、一つの投資戦略だったかもしれません。ですが、この「足りてる時代」にあって独自性ある未来を見据えるならば、「仕事を創るための投資」に賭けていく以外に道はありません。
その投資は「仕事を貰うための投資」になっていませんか?
“応用力”向上にしっかりと投資していますか?