【第166話】商売繁盛を決定づける「仕上がり感」の絶対条件

「ちょっと時間かかっちゃてるね」と、苦笑いされながら、独自の新商品を開発中の社長。設計、図面、部品、工法や販売拡大のシナリオもほぼ確立し、もう間もなくその商品が世に出ようとしています。

 

この社長はご自身が技術者でもあり、開発が遅れ気味…と思いながらも、大切なポイントを分かっておられます。だから苦笑いにもある種の達成感がにじみます。

 

また、ある社長は、ひとつの商品を開発するのに3~5年も研究されてきました。「ず~と持ち出しだからさ~、大変なんだよ」とおっしゃいますが、その表情に後悔はありません。

 

研究者出身だということもあって、新たな商品を開発しようとすれば、使用する素材や製造方法の歴史にまでさかのぼって徹底的に勉強されます。かといって、そのまま使うということはありません。必ず独自に進化発展させてご自身のモノにされています。

 

一方で「これ、売れそうだと思いませんか」、「良いビジネスに出会いました」とか、「良いモノなので広めたい」といったお話をお聞きします。

 

これは言い換えれば「他人の土俵に他人のフンドシで出よう」と言っているに等しいということに、早く気付いていただく必要があります。

 

先に述べた経営者方がどんな努力をしてきたか…。新たなビジネスを構築するという誇り高き進取の精神と、売れそうなモノを探してくるといった、楽して儲けよう的な発想を混同しないでいただきたいものです。

 

新商品開発、新事業構築というのは、一朝一夕に成るものではありません。そもそも論として何が難しかといえば、答えが無いからです。

 

いわば、新商品開発や新事業構築というのは、「答え探し」ではなくて、「答え創り」だということです。

 

このことには、経営者が絶対に押さえておかなければならない本質が含まれています。新商品開発や新事業構築というのは、「答え創り」すなわち、思考的プロセスこそがその実体だということです。

 

こういった思考的プロセスというのは、いわば「考えを深めている」状態ということですから、外から見ると何やら立ち止まっているように見えるものです。

 

ですが、ご本人には分かるのです。混沌としたところからフラフラしながらもご自身の考えが整理され深まっていることが…。これこそが「達成感を伴う苦笑い」の発生メカニズムという訳です。

 

経営の本質的な強さ、すなわち質的な向上は、こういった思考プロセスで培われていくものです。そして商売を繁盛させていこうと思うならば、こういった悶々とした思考プロセスを経ていくことが欠かせません。

 

自分なりの「答え創り」は果てしなく終わりはありませんが、考えて、考えて、考え貫くと、いずれ今の時点でベストと本気で思える一定の“沈着”に到達します。

 

もちろん、ここで「考える」といっているのは、ただ座って考えているだけではありません。実験したり、試作したり、計算したりという様々な行動を伴うものです。ですが、この行動はあくまでも考えを深めるためのものであって、考えが出来上がったものを遂行して売上利益化していくという実行プロセスとは意味が違います。

 

答え無き世界で答えを見出すという思考プロセスにおいて、「仕上がり感」は“沈着”という姿で静かに訪れます。これこそが、事業リリースの重要サインであり、商売繁盛の絶対条件なのです。

 

商売から感じる「仕上がり感」とは、商品の見た目やパッケージデザインといったことではないということです。その背景に宿る思想の完成度、すなわち“沈着”なのです。

 

“沈着”まで行き着けば必ず繁盛するとは言えなくても、“沈着”なくして繁盛することもないでしょう。そう断言できる理由は簡単です。ご自身で納得できていないものをお客様が買ってくれますか?ということです。

 

その新事業は「答え創り」になっていますか?

今、準備中のそのビジネスは“沈着”していますか?

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