【第15話】分業時代を生き抜いていくための思考法とは
今、我々はとても高度に分業化された世界を生きています。例えば、工業製品であれば設計、素材、加工、組み立て、検査、梱包、物流、販売店…供給チェーンは相当に分業化されています。
これら供給チェーンはどんどんと分業化され、開発・設計だけを行う会社、電子機器の受託製造に特化した会社、組み立てのみを行う会社、製品の安全性や環境性の試験を行う会社など、機能特化が進んでいます。
有名ラーメン店の自宅向けの中食商品を見かけますが、オリジナルのラーメンをとても良く再現しています。これもスープを作る専門の会社が一役買っています。
自社の能力を発揮できる分野に特化することでお客様への提供価値を高める事ができ、分業化は社会全体が効率的になるため、今後更に進んでいくことになるでしょう。
この様に分業化が進んでいく下で、自社の役割がどのように変わっていくのかを常に問い直していかなければ置いていかれてしまいます。構造変化に気が付かないことは経営にとって致命傷になり得ます。
新事業立ち上げや新商品開発の際、一段上のスケールで勝負していこうとすれば必ずリソースが不足しますので、外部を活用してビジネスを組み立てていく視点が欠かせません。初期投資を抑えつつ自社に無い能力を素早く調達できるのですから使わない手はありません。分業時代の大きなメリットを享受するのです。
ただし、注意点もあります。外注に先立ち自社のコア領域をしっかりと認識しておくことです。コア領域を踏まえて内外製を判断し、その領域については厳しい訓練を続けていく覚悟が必要です。ちなみに、一旦、外注したものを内製化するのは至難の業です。
分業化以前はどうだったのか?
数百年も遡れば、生きるために必要な事の全てを自分でやっていた時代が思い起こされます。現代は分業という仕組みの下で、それを得意とする人が自分の代わりにやってくれているのです。
分業による外部活用のメリットは大きいのですが、難しさもあります。外注先との関係調整や不具合対処といった新たな業務に対応しなければなりませんし、外注先とは基本的に契約による関係なので事業の理念などを共有することが難しいという点があります。
こういった難しい点にブレずに向かい合っていくためには基本姿勢が大切になります。全て自分でやっていたという原点的な視点に立てば、外部活用で起こった不具合であってもお客様に対しては全て「自社の責任」という基本姿勢です。
勿論、基本姿勢は。。。ということです。自社内部のマネジメントとして外注先に対する契約履行への要求や、自社の事業理念を伝えていくための取組は必要です。
PL法、表示法、株主代表訴訟など、経営者にとってはとても厳しい世相になっていますが、それでもお客様に対しては全て自社の責任であるという基本姿勢が大切です。
外部活用であるからこそ発生するややこしい事を含めてもなお、これからの事業展開においては不可欠な取組です。自社事業を成長拡大させていくための能力の調達法として外部活用の手綱を緩めてはいけません。
御社は「外部活用」を進めていますか? そしてその際お客様に対しては「全て自社の責任」という基本姿勢で取り組んでいますか?