【第143話】新事業の成功を計る真の挑戦尺度
新事業の立ち上げを目指すというのは大変なことです。無から有を生み出すのですから、エネルギーを要する一つの研究開発です。
営業を開始してからも、初期トラブルは付き物。「もう、あんな大変な思いは二度としたくない…」とお考えの経営者も多いことでしょう。
今だからこそ、笑話、自慢話かもしれませんが。
新事業の立ち上げは「自分のチカラの無さを痛感する瞬間」でもあります。あえてこんな気持ちの中に突っ込んでいくのですから、社長業の凄さが思いやられます。
ですが、経営に携わる以上、それは“宿命”です。良いうちに次のことを考えていかなければなりません。
数々の社長の「次なる挑戦」をお聞きします。そういったシーンというのは、何ともたくましく、聞いているこちらもスイッチが入って頭がグルグルと回り始めます。
ところが、「次なる挑戦」なのに、聞きいているこちら側のスイッチが入らない。そんなことがあります。あるいは、スイッチが入らないどころか腹立たしさを覚えることも…。
例えば、
本業の見通しが厳しいから、別のコトでもやってみようか…。
こんな商売が流行ってるみたいだから、乗っかってみようか…。
こうやると儲かるみたいだから、マネしてみようか…。
そうまでは言っていなくても、こんな感じです。いかがでしょうか?
自分たちは何者であろうとしているのか、誰のために働きたいのか…。自分軸もなければ顧客軸もアヤフヤ。
これはこれで商売のカタチですので、どうこう申し上げるつもりはありませんが、少なくても“挑戦”になっていないことは確かでしょう。
“挑戦”になっていないのですから、こういったお話を聞いていてスイッチが入らないのは当然のことです。
「自分たちにとっては新しい取組」という意味で、“挑戦”になっているのかもしれませんが、ここでいう“挑戦”とは、そういうことではありません。
例えその仕事が御社にとって新しかったとしても、その本質がもう世にある仕事を仕入れて販売するという仕入販売業であったならば、それは“挑戦”と呼べるものではありません。
何らかの独自要素で発展させるという工夫努力が不可欠です。仮にその努力を怠ったならば、自分たちの商品ではないのですから、お客様に飽きられたら対応できません。短命に終わることを覚悟しておかなければなりません。
こういった事例から、そこには“挑戦”に対する一つの尺度が見えてきます。
「自分たちのチカラをもっと発揮して、新しい顧客価値を生み出そうとする心意気」ということです。
その心意気を計るための代替指標として「一人当たり売上高」をお勧めしています。「次の事業は今の事業よりも「一人当たり売上高」を高めるように“挑戦”する」。こう設定すれば、階段を上るがごとく組織としての強さを増していくことができます。
真の成長には順番があります。「売上高の拡大が利益の再投資で出来上がっているか」ということです。小さくても先にしっかりと利益を出して、その利益を再投資することで事業が成長していく。この順番が大切です。
そのためにも、新事業の構想にあたっては、人員投入以上に利益性を向上させていく視点、すなわち「一人当たり売上高」の向上を目指すことが大切です。
御社の新事業は本当の意味で“挑戦”になっていますか?
その新事業で「一人当たり売上高」は向上しますか?