【第138話】経営の停滞感を突破する“デッドゾーン”脱出法

テニスの試合では、コートのどこに居るか……、ポジショニングが極めて重要です。

 

ポジショニングをミスした時には「“デッドゾーン”に入ってたよ」、「中途半端はダメ、前か後ろか決めないと」といった言葉が飛び交います。

 

“デッドゾーン”とは、コートの中のベースラインとサービスラインの中間あたりの範囲を指します。ここは最もボールがバウンドするあたりなので打ち返しにくいためミスが多くなります。加えて、攻撃にも守備にも適さないという不利なゾーンです。

 

よって、勝ちたければ「“デッドゾーン”に立たない」ということがセオリーになっています。

 

ですが、素人がコートに立つと、ほとんどがこの“デッドゾーン”に立ちます。なぜそうなるかといえば、理由は簡単です。ボールが良く飛んでくるところだからです。ここに立つとあまり走らなくて済むから楽なのです。

 

しかし、試合で勝つことを目指すならば、楽をしている場合ではありません。成り行き上、“デッドゾーン”に入ってしまったら、一所懸命にベースラインまで下がるか、サービスラインより前まで行ってネットについてボレーの体制を整えるか…。

 

基本的には“デッドゾーン”からポジショニングを立て直すための選択を迫られることになります。

 

事業経営においても、「戦略上、不利な立ち位置にいながら、そこが楽で、それを言い訳にしている状況」というのは、テニスでいうところの“デッドゾーン”に似ています。

 

このままでは、まず状況が好転することはないのです。しかし、問題は“デッドゾーン”に入ってしまったことではなくて、そこから前に行くのか、後ろに下がるのか、決められずにいつまでもそのゾーンにいることの方です。

 

そのことをお伝えしようとしても、こういった経営者に限って、「業界全体が…」「この地域が…」「お客様の好みが変わって…」「うちはこだわりを持ってやっている…」、上手くいかないことが自分のせいではないということの理由をご説明されます。

 

なにも責めている訳ではありませんし、仰っていることは多分事実なのでしょう。ですがこのままでは状況の好転は望めないので、後ろに下がるのか、前に出るのか…、これからについて決めませんかとお伝えしているのです。

 

こういった経営者の方の問題は、上手くいかない理由が無くなることもイヤだと考えている点です。上手くいかない理由が無くなってしまえば、残りは全て自分のせいになってしまうからです。

 

つまり、言い訳できる状況から出て言い訳できない状況に行くのが怖いのです。いつしか“デッドゾーン”が言い訳できる心地の良いコンフォートゾーンになってしまっているのです。ご自身としては心地良いのですから、そこから抜け出そうとしなくなります。

 

一方、“デッドゾーン”に入っても、直ちにご自身の考え方のポジショニングを立て直し、しっかりと成長につなげていらっしゃる経営者もおられます。

 

大変尊敬申し上げている社長は、過去に厳しい経営状況を乗り越えてこられた方です。経営状況や従業員の声を聞き、考え方のポジショニングを見事に立て直されました。

 

その方法は、とてもシンプルですが力強いものです。「私が悪かった」と宣言されたのです。

 

社長は、大切に保管している当時の資料を社長室のテーブルの上に広げて、昨日のことのようにお話くださいました。

 

現状を真摯に受け止め、まず自分から変わる。強い社長というのは、こうやって“デッドゾーン”を抜けていくのだと鳥肌が立ったことを覚えています。

 

その後、今なおその会社の経営が十年以上に渡って上向きを続けていることは想像に難くないでしょう。

 

“デッドゾーン”は楽ですが勝てるポジショニングではありません。しばらくそこに居ると、それが心地よくなって抜けられなくなるから危ないのです。

 

“デッドゾーン”がコンフォートゾーンになってしまっていませんか?

「私が悪かった」と宣言して、“デッドゾーン”を脱出しませんか?

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