【第13話】「お金」を扱うために訓練が必要な理由
新事業の立ち上げプロジェクトでは、製品・商品の企画を中心に生産や販売の体制を検討し、収益性高く売れるカタチに仕上げていきます。
これに続いて、動く仕組みとして回していくためには設備投資・工事施工、人員確保・育成も重要な検討項目になってきます。
そして、同時に初期投資、資金調達、収支計画、返済計画、採算性計算等々、「お金」の検討を整えていかなければなりません。
プロジェクトは、資金規模が大きくなればなるほど数字の話が議論の中心に寄ってきます。当たり前の事ですが、規模が大きくなればなるほど、まずはやってみてからでは済まされないからです。
経営者の方から様々な事業構想をお聞きする中で、狙う売上規模や初期投資の資金規模などをお話される方は少ないのが現状です。
しかし一方、大体ではあっても最初からお金の規模までお話される社長もいらっしゃいます。動けばお金が掛かるのがビジネス。だからこそ、どう動けばどのぐらいの速度でお金が減り、どう動けばそれ以上のお金が入ってくるようになるか。
お金の話ができる社長は採算イメージが心象風景として頭の中に出来上っているので、お話がとてもカラフルで鮮やかです。
こういう経営者の方は、年齢の老若を問わずいわゆるベテラン経営者。「動き」と「お金」が頭の中で連動しています。動きとお金の両方を結び付けて考えることができるようになると、ビジネスとしてとても立体感が出ます。
提供する製品・商品・サービスや提供の仕方については説明できるのに、お金の事についてはなかなか説明できない。これは人間の本能としてお金の能力を持ち合わせていないことに起因しています。
お金は世の中の物々交換をもっと上手くやるための手段として人間が作ったものであって、人間元来の本能には組み込まれていないのです。
だからこそ、お金を扱っていくためにはしっかりと訓練をしなければなりません。渋沢栄一氏は「論語と算盤」、稲盛和夫氏は「フィロソフィーとアメーバ経営(管理会計システム)」とおっしゃっています。お金の扱い方は事業の成否を左右するほど重大な能力なのです。
自社が提供する製品やサービスがいくらの貨幣価値に相当するかについては、だれも教えてはくれません。こういった値付けの苦労やお金の流れに触れていくうちに、ベテラン経営者にもなると、お金の“匂い”や“味”まで感じることができるようになってくる訳です。後天的な経験や訓練の賜物としてお金を扱う能力が磨き上げられているのです。
弊社のコンサルティングでは、事業開発や製品・サービス開発と並行して採算性計算や資金調達計画に手を着けていきます。これは、事業の立ち上げ時点から製品・サービス開発と採算性を両輪として行ったり来たりしながら事業化を考えていかないと片手落ちの事業計画になってしまうからです。
そしてこれは、「事業開発や製品・サービス開発は訓練なく本能に任せておいてもある程度出来てくるのですがフィナンシャルプランニングは放っておくと頭の片隅に追いやられる」という人間本来の思考バランスを埋めるための重要な手順なのです。
考えすぎると動けなくなる、という声も聞こえてきますが、数字を詰めずに新事業を始めるなど言語道断と言わざるを得ません。しっかりと儲けなければ大切な社員に報いることなどできません。
現実的な数字を見て、覚めて、醒めて、冷めて、動けなくなるなら、始める前の方がいいのです。その事業を始めてしまえば遅かれ早かれその現実的な数字とご対面することになります。そうなってからリカバーするのは大変です。数字をしっかりと持ち上げる工夫努力をしてから始めることが肝要です。
損益計算やファイナンス計算は“技術”です。そしてその技術を高めるのに収益事業立ち上げが絶好のチャンスです。
御社ではお金を扱う訓練を意識していますか?お金の“匂い”や“味”を感じていますか?