【第126話】売上を生むチカラと利益を生むチカラの違い
昨今、とても嬉しく感じることがあります。それは、多くの社長が売上高の目標を語る際に、利益目標も同時に掲げられることが増えてきているからです。「利益を後回し」にしないことは、経営においてとても重要な考え方です。
当然のことながら、企業の利益は売上からもたらされます。よって、売上さえ上がれば企業の大方の問題は解決するとさえいえます。
ところが、創業以来、売上高は伸ばし続けながらも、利益性に乏しかったために、財務的に厳しく……という企業も存在します。
つまり、売上を伸ばそうとする際には、販売物の粗利(グロスマージン)を一層高めるような開発的工夫を加えると同時に、スケールメリットを活かす、生産性を高める、アライアンスを検討する、やみくもに人員を増やさない……といった収益構造の改善に対する工夫努力が欠かせません。
要は、今よりも効率的な事業モデルに生まれ変わりながら大きくなることを意識しておかないと、大きくなればなるほど売上は増えたが利益率は下がった……になってしまいます。
仮に利益の額は増えていたとしても利益率が低下していれば、経営は土俵際に追いやられていきます。
もうひとつ。売上を拡大する視点だけで利益を置き去りにして企業の成長を考えるとどうなるか、ということです。
例えば、売上を上げる最も簡単な方法は……と聞かれたらどうお答えになりますか?
多分、売れそうなものを探してきて売ることを考えるでしょう。これは、もっとも原始的で単純な事業モデルですから、深く考えないで商売を始めようとすると、大抵この型になります。
この商売自体は一つの型として価値はあるのですが、こういった経営者の問題は、自分で何か付加価値を創ろうとせず、他人が作った何かに便乗しているだけに過ぎないということです。
「なぜ、この商売を始められたのですか?」と聞けば、「良いモノなので広めたいと思った」「東京で流行っているのを見て、大阪でもいけるんじゃないかと思った」「こんなの地元で売ったら面白いんじゃないかと思って」といった限りなく浅い答えが返ってきます。
これらの答えは、何か能動的なように聞こえますが、事業を構築するという開発的努力から見れば、どれも極めて受動的です。
もう少し補足すれば、儲かりそうなネタが見つかったから乗っかってやってみただけということです。
このような、思考を伴わない行動の場合、どうなるか……、想像してみてください。
つまり、「一定の思考の深さ、自分なりの答え」というものを伴っていないビジネス行動というのは、行動はしているので一定の売上につながりますが、元々、付加価値、粗利が事業に埋め込まれていないのですから、利益を上げることは根本的に難しいといわざるを得ません。
粗利を生む・高めるための思考的な努力をほとんどしないまま、行動まかせで事業を拡大していく経営というのは、極めて危険です。なぜなら、既存事業の利益率が下がってくると、また別のネタで追加の投資を行うしかないからです。
これでは、高めたり、深めたり……といったことができず、いつまでたっても強い経営にならないのは明らかです。
真に能動的とは、他人がどうのこうのというよりは、むしろ限りなく個人的・組織的に培ってきた能力や思想を、どう売上・利益に転換していくかを考える姿です。
このように、売上高は行動的努力によって築かれますが、利益を生むのは思考的努力です。思考的努力で粗利を高めておくから、販売拡大で利益を積み増していくことができるのです。
粗利を生む思考的努力は十分ですか?
ネタを探さない覚悟はできていますか?