【第11話】仕事を探していませんか?
「経営者の仕事は?」と聞かれたら先ず何を思い浮かべるでしょうか。お客様や取引先へのあいさつ回り、操業状況管理、社員の勤怠状況確認、売上・収支状況の確認、金融機関との調整、クレーム対応。。。どれも欠かせないように思えます。
これらは“今”の仕事、今日を動かすために大切ではありますが、経営者は“未来”を見据えていることが肝要です。そして、経営理念の構築、経営計画の策定等を通じて活力ある未来のために「仕事を創る」事に取り組んでいかなければならないのです。
これをやろうと事業のネタを持ってくる鼻の利く社長、社員の権限・裁量を大きくすることで新しいことに取り組む土壌を作るのが上手い社長、新事業立ち上げを決めて社内にチームを作りチーム力を高めながら今後の仕事を創り上げていく社長。。。
やり方は違っていても、ご自身の性格なども踏まえながらそれぞれに仕事を創るスタイルがあります。お付き合いさせていただいている社長方はとても上手く“仕事(すること)”を創り上げています。
なぜ上手いのか。新事業開発、新製品・新サービス開発。。。収益事業立ち上げの間に費やされるコストや時間は開発投資です。仕事を創るのが上手い社長方は投資に慣れているのです。先にお金が手元から離れ、後からリターンとなって返ってくることに対して腹が据わっています。
コストや時間を投下し仕事を創って、これを売上にしていく。この順番は当たり前の様に聞こえますが、企画提案型・開発型のビジネスになっているという点でとても重要です。世の中に出す前の“タメ”が違うのです。
一方、そうではないビジネスの組み立てもあります。オーダーメイドの色合いが濃い受託型のビジネスの場合です。受注・売上が先にあって、その売上を検収・入金してもらうために仕様に定められた仕事をこなしていくという順番です。
もちろん、受注するためにはそれに見合った能力や技術力といった裏付けとなる信用が必要な訳ですが、発注者側に企画がありますので、規模が大きくても、どうしても下請け的になります。
ある程度、大きな企業になれば、事業開発や製品開発といった部門があり、業務分担として新たな事業や製品・サービスが生み出されてくる組織もあります。
しかし、開発が自走しているこういった組織にあっても、なお社長は仕事を創り続けなければなりません。一歩先の仕事、未来を見据えた仕事。。。社長にしかできない仕事の領域があるのです。
「俺が言わないと誰も始めない」、「開発スタッフにはもっと勉強してほしいのだが」、「最近、怖くなってきました」など。私と二人になったふとした瞬間にこぼれ出る社長方の心の叫びは、こういった社長領域を一人で担っている重圧と苦悩から来るものです。「仕事を創る」が常に頭にあるというのは、なかなか疲れることなのです。
そして、「仕事を創る」際にとても重要な考え方があります。商売のネタを探すのと仕事そのものを探す、のでは意味が違うという点です。
ネタを見つけ売りモノ化するという企画提案型が昨今の商売には不可欠です。ネタとは自社の独自能力と市場欲求の重なった領域です。自社の独自能力が市場欲求に届かなければ、届くようにするための努力をしていく必要があります。殻を破ることに挑戦しなければ一歩先へ進めるはずがないのです。
原則、モノは足りているのですから、新たな企画提案で新しい市場を切り開く以外に売上を伸ばす道は無いのです。これは工夫努力で企画提案を生み出し、それを販売していくという挑戦の道です。もちろん投資発想も必要です。
一方、仕事そのものを探す、というのはどういう意味か。。。自社の能力でできる仕事・できそうな仕事はありませんか。。。いわば今ある仕事を頂くための営業に他なりません。能力・スペックそのものが売りモノのため価格競争に巻き込まれますが、気楽な事に投資発想はあまり必要ありません。
ところが今の時代、残念なことに仕事を探してもそこらへんに転がってはいません。経済成長を背景に仕事を探す時代はとっくに終わっているのです。できる「仕事を探す」行動的努力より、「仕事を創る」ための思考的努力が大切です。
御社では仕事を探そうとしていませんか。腹を据えてしっかりと仕事を「創ろう」としていますか?