【第107話】「理想」を描くチカラが売上・利益を向上させる理由
多くの経営者にお会いする中で、その方の「強さ」に、ハッとさせられることが度々あります。そういった経営者殿の「強さ」とは何なのか。。。と、いつも考えさせられます。
「世の中がこうなっていくから、当社はこういう取組みを行っている」とお聞きすることが頻繁にあります。こういった経営環境分析から出発して、自社の取組みを導き出しているという文脈でのお話は、確かに経営者として適切な判断を下しているように聞こえますが、何か足りないように感じてしまいます。
「強さ」を感じる経営者の方々に共通しているのは、困難な現実の乗り越え方です。
多くの方は、目の前の困難な現実を実務能力で乗り越えていこうとされます。つまり、困難な現実を処理していきます。これは、言い方を変えれば、困難を乗り越えることが目的化していることになります。
経営とはほとんどが困難への対処ですから、困難を乗り越えることが目的化した意識の下で経営にあたると、経営そのものが目の前の現実への対処になってしまいます。
こういった対処療法的な取組みを積み上げると、悪くない経営ではあっても、良い経営にはなりません。
一方で、「強さ」を感じる経営者の方々は違います。困難な現実の中にあってこそ、その先に意識があります。その先に、ご自身ならではの独自の「理想」をお持ちです。
厳しい現状だからこそ、お客様への提供価値をどうやって生み出していくか。困難な時代だからこそ、当社はいかに在りたいか。厳しいからこそ、それをどう抜けたか。こういったことこそが大切だということをご存知なのです。
「強さ」を感じる経営者は、目の前の困難な現実の、その先の「理想」に向けて仕事をするので、多少の手負いを受けながらも「理想」に近づいていきます。
直接的に考えれば「夢や理想なんか一円にもならない」のかもしれません。ですが、お見受けする限り、「理想」のチカラはとても偉大なようです。
環境変化への適合とは、良くも悪くも時代流されることでもあり、捉え方を間違えれば、企業の主体性を失っていくことにつながりかねません。
管理者には目の前の現実を処理し、問題を解決していくことが期待されます。ですが、経営者には組織の先導者としての役割が求められます。そのチカラを発揮していこうと考えれば、どうすれば良いか。。。
経営者が持つチカラを最も発揮せしめるのは「理想」を掲げることです。
経営者にとっての“仕事”とは、実務の遂行・管理だけではありません。その先に意識を持っていけているかどうかが、大いなるチカラを発揮できるかどうかの鍵を握るのです。
その先の「理想」を掲げ、意志を表明することには、とても大きな意味があります。それは、経営が「できること」の請負業から、「やりたいこと」への提案業へと変貌することです。
「当社はこんなことできますのでお任せください」と能力を売るか、「当社と一緒にこんなことしませんか」と提案を売るかの差は、表面上、同じような製品・サービスを提供していたとしても、中身としては似て非なる事業であり、まったく異なる収益構造をもたらします。
そして何よりも自分達が「やりたいこと」を仕事としてやっているのですから、売上は伸びやすくなりますし、提案としての付加価値向上によって利益率も向上します。
ただし、ここでいう「理想」とは、経営者ご本人の内側からほとばしる、とても内発的なものであることが肝心です。決して新聞やニュースで聞くような、万人受けする耳障りの良いフレーズである必要はありません。
経営を時代に適合させていくことも欠かせない視点ですが、「理想」を掲げないまま、ただただ環境への適合を図っていくならば、経営の主体性を喪失していき、いずれ何者でもなくなります。
経営者として独自の「理想」を掲げていますか?
「理想」を掲げることで先導者になっていますか?