【第108話】売上・利益を伸ばすために欠かせない真の“欲しい”からの距離感

ペティ氏は、農業、工業、商業の順に収益が高くなることを一般法則として導き、その後、クラーク氏が、経済発展につれて就労人口が一次産業(農業)から二次産業(工業)、続いて三次産業(サービス業)へと移っていくことを説明しました。

 

これらの法則は「ぺティ=クラークの法則」として知られ、より収益性が高い産業へ、より需要が多い市場へ。。。ということで経済活動が、順次、三次産業へ移っていくと指摘しています。

 

その指摘どおり、産業構造は変化し「経済のサービス化」が進んでいます。ところが、日本ではサービス業の生産性の低さが問題視されて久しい状況が続いています。

 

どんな産業においても、新規に立ち上げる多くの事業は何らかのカタチで「サービス」と関連づけられます。あるいは、単にモノだけを売っているような商売は、ほぼ存在しないという意味で、世の商売は全てお客様へのサービス業と見ることもできるでしょう。

 

多様化する社会で新たな事業展開を考えていこうとすれば、「サービス」への着想は必要不可欠ではあるものの、その着想に失敗してしまうことで、どうやっても収益性を確保できない事業に迷い込む方々をお見受けします。

 

常々、「見えるニーズは儲からない」とお伝えしています。表面に見える問題としてのニーズは、必ずしもお客様が本当に“欲しい”ものとは限らないということに注意が必要だということです。

 

これは、知らず知らずにお客様の真の“欲しい”から距離が離れてしまっていることに起因します。

 

例えば、中古自動車販売店。中古自動車販売業とは、自動車を買いたい、買い替えたい、売りたいといった欲求に対応する流通業です。

 

つまり、自動車メーカーが自動車販売店を通じて自動車のプライマリィ(一次的)な市場を創り、それを基盤として、中古自動車販売店が中古自動車流通というセカンダリィ(二次的)な市場を形成しているということです。

 

ここで次なる「サービス」が着想されます。中古車の情報をお客様がいつでもネット上で見ることができるようにしたらと考えるでしょう。そして、現在、多くの中古車販売店が自社の保有中古車をネット上で閲覧できるようにしています。

 

ここまでは、実店舗で売るか、ネットで実店舗に誘導するか、ネットで売るか、と言う意味で販売チャネルの複線化、オムニチャネル化を図っているといえます。こういった取組みは、まだ売り方の工夫の範囲であり実態的といえます。

 

ところが、「サービス化」の視点だけで、市場を見てしまう方々は次のように考えます。「複数の中古車屋さんのwebサイトから、自分の欲しい車が早く安く見つかるとイイよね?」と。

 

いかがでしょうか?こうなるとこのサービスは、もはや中古自動車販売業ではありません。つまり、自動車が“欲しい”お客様から見ればターシャリィ(三次的)な市場ということです。

 

確かに、あったら嬉しいサービスかもしれませんが、自動車市場の真の“欲しい”は自動車そのものの所有や使用から生まれることを考えれば、こういったサービスは真の“欲しい”から距離が相当に離れてしまっていることにお気付きいただけるものと思います。

 

一つの“欲しい”を実現するために、複数の経営体が連携して事業を成していくことには大いに賛成ですし、そうしなければ新たな事業を立ち上げることなどできません。

 

一方で、他の事業者が作った商売をベースにして、その上にご自身の商売を築こうとするならば、あくまでもセカンダリィ市場までであって、気付かぬうちにターシャリィ市場に手を出していたならば、ほぼ確実に事業継続に必要な収益性を確保することはできません。

 

企業間の連携を構築していくことと、ターシャリィ市場に手を出してしまうことは、全く異なる市場に焦点を当ててしまっているということであり、真の“欲しい”から離れ過ぎているため、収益性を確保することは構造的に困難なのです。

 

まずは、プライマリィ市場で勝負することを考え、同時にセカンダリィ市場まで内部化することで収益性を最大化させることを目指すことが肝心です。目の前に見えるからといって、ターシャリィ市場へ逃げてはいけません。

 

御社の事業はセカンダリィ市場までに収まっていますか?

お客様の“欲しい”に近い市場を狙っていますか?

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