【第548話】独自ビジネスを生み出す研究開発の進め方

「この商品はこれまでのモノと全く違うんです」と社長。

 

その違いを確認するため製法を詳しくお聞きすると、確かに従来の作り方とは違うところがあるものの…、出来上がった商品特徴は従来品とさして違わず。

 

新たな製法…ということですが、それを実装するために材料調達は難易度を増し、製造工程数や各工程での作業時間も増え、よって言うまでもなく製造原価は商売として成り立つようなものではなくなってしまっています。

 

そして最も大きな問題は、従来品とは全く違う、新しい製法、新しい商品…と声高に言いすぎることで、お客様の商品理解が得られず全然「売れない」という結果に。

 

こうした、努力が実らない…という残念な結果は、経営が賭けである以上、往々にして起こり得ることです。

 

だからこそ、我々経営者は、その賭けの勝算を高めるべく事業開発を研究しなければなりません。

 

ちなみに、移ろい行く世の中ですから、そこで展開されるビジネスも変わっていくものです。しかし、時代は変わろうとも研究開発にはある一定の進め方、パターンが存在します。

 

そして、研究者と呼ばれるような方々は、専門分野は違えど、そうした研究開発の進め方、成果を出すための思考法を習得されている人たちだということです。

 

そうした研究開発で成果を出すための進め方を見ていきましょう。

 

まず、研究開発では目標が設定されます。これは何に取り組むのかという意味で問題意識と読み替えても良いことです。そしてこの目標は目指す成果ということになります。

 

多くの技術開発の場合、特定の問題や限界を新たな技術で解決して超えていくことを目指します。

 

前述の社長も、その商品の従来からの作り方に問題意識を見出し、新たな製法を創り上げた…ということです。

 

ここで既に、前述の社長は目標設定を間違えていることが分かります。社長は技術者としての研究開発に取り組んでしまいまいた。

 

我々経営者、すなわち事業を創り存続させていくことを目指す立場からすれば、開発目標は常に“採算”だということです。

 

商品開発の過程で、良い商品を創ろうとすることはとても大切ですが、あくまでも事業、ビジネスとして商品開発を目指せば、採算へのこだわりを忘れてはなりません。

 

前述の社長が、なぜ商品開発の途中で採算意識を失ってしまったかといえば、そこにはいつも共通する原因が存在します。

 

その原因とは、手を動かし始めてしまい、頭を動かすことを忘れていってしまったからに他なりません。

 

大切なことなのでもう少し詳しく補足すれば、この社長がやるべきは、新たな製法づくりに手を動かし始めてしまう前に、世界中の製法を調べるべきだったのです。採算づくりとは、最小のコストで最大の成果を目指すことです。

 

研究開発ではこれを先行研究調査(サーベイ)と呼び、どんな研究でも徹底的なサーベイが求められます。

 

これは何をしているかといえば、先人たちの知恵を活かせ…ということです。まずは先人たちの知恵をなぞり、その思考展開を感じ理解し、その先行者が出した成果を再現できる力量を習得する。オリジナルな研究成果を出せるというのはその先…ということです。

 

経営者の研究開発の目標は常に“採算”です。この研究開発投資が生むリターンで投資を回収し、さらにその先に豊かな成長発展をもたらすことです。

 

渾身の研究開発投資を無駄な努力にしないためにも、先に進もうとする前に立ち止まり、まずはこれまでを知ろうとするサーベイ的努力が欠かせません。

 

これまでに無い、人と違いたい…とサーベイを怠っていませんか?

商品だけでなく事業全体で“違い”を生み出そうとしていますか?

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