【第513話】現有能力でもっと稼ぐ成長戦略の立て方
「弊社の技術力は…」ということで、社長より実績、技術力の高さやこだわり…、これからの新事業への意気込みをお話いただきました。
こうしたお打合せの帰り際、「実は、社長が職人気質でして…」と同席されていた某役員の方から、これからの進め方について、大変有益な示唆をいただきました。
弊社では、クライアント、顧問先のほとんどがいわゆる「モノづくり」の企業ですから、技術力というのは経営力の源泉であり、とても大切な経営の根っ子だと考えています。
ですから、社長、経営者が技術者、あるいは技術に精通していることは、大切な経営資質と考えています。
ところが、ここでいう「職人気質」というのは、技術に精通してはいるものの…という意味で、ちょっと含みのあるお話であることは言うまでもありません。
ちなみに、何らかの材料を商品に転換して販売するような付加価値ビジネス、こうした転換能力を経営の核に据えている技術ビジネスというのは、時にその転換力、技術へのこだわりが、成長の足かせになってしまう場合があります。
大切な点なので補足すれば、技術力を高めることが成長への唯一の道だ…と考えてしまうということです。
確かに、技術経営の世界において、技術が高いこととは、他社ができ得ない違いを生むことにつながりますし、より高いレベルでビジネスを展開できることにつながります。
ですが、能力技術の高さだけがビジネスチャンスや採算筋なのかといえば、決してそうではありません。
事実、生産のロボット化が進むことで、その反対側にロボットではやりにくい製品市場というのが生まれ、豊かな収益性を生み出している経営もあります。
つまり、現有能力の応用で、新たに稼ぐための道筋というのが常に存在しています。
ただし、先にお伝えしておけば、能力技術というのはその時代時代において、進歩発展していくものですから、そこから著しく遅れている…ということをお話しているのではありません。
ここでお伝えしたいのは、新たなビジネスを生み出すために、極めて能力が高い、あるいは新たな技術を有している…ということは、それほど重要なことではないということです。
前述の、「社長が職人気質でして…」を読み解けば、社長が現有の能力技術に固執しすぎていて、ビジネス、お客様への応用に意識が向いていないというお話です。
つまり、技術能力というものをいわば学校の試験のように考えていて、その絶対値的なレベルを上げることにしか意識が及んでいないということです。
確かに、モノを創るということには完璧主義が求められます。このため、責任感からどうしても、「もっと」「今よりも」…と足元を固めようと保守的になってしまいがちです。
しかし、そのことと現有能力を他に応用して新たなビジネスを生み出そうとすることは、また別な話なのです。
ちょっと考えれば分かることですが、ビジネス、あるいは付加価値というのは、能力技術をそのままを販売しているのではなくて、その応用力を販売しているということです。
これはある意味、能力技術の高さよりもむしろその応用的な発想にこそビジネスの採算筋が存在しているということです。
ただし、能力技術の高さによって生まれるビジネス機会が在ることもまた事実です。
しかし、そうした能力技術を培うためには、その仕事を成さずして獲得できるはずもないということを考えれば、まずは現有能力の応用発展から次なるビジネスを発想しようとする意識が大切です。
まずは、持っている能力技術の応用を考え、使いながら鍛えて高めていくことが、着実な成長発展の道を拓くための努力姿勢です。
まずは、現有能力の応用で新たなビジネスを目指していますか?
その応用は能力技術を高めることにつながっていますか?