【第476話】令和時代でも大切な“社内コンパ”のススメ
「ウチは、まずは事務職で募集して、その後、しばらく働いてもらってから部署異動を相談して、本人が良ければ異動してもらってるよ」とS社長。
採用に人が集まらなくて…というK社長の相談に、S社長が親身に答えてあげています。こうしたやり方は何ともS社長らしく、横で聞いていて笑ってしまいました。
S社長のご経験から、事務職という響きは、職を探している人にとって心理的にハードルが低いため集まりやすいよ…とのアドバイスです。
こうしたやり方、事務職で採用と騙しておいて…と人によってはインチキ臭いと感じる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、どうでしょうか? 興味がある会社だけどハードルが高そう…と感じている人に、やってみようかな、とやる気を起こしてもらっているとしたら…。
こうした百戦錬磨、徒手空拳、裸一貫からビジネスを立ち上げてきた社長に共通することがあります。
それは、「人間らしさ」です。ここでいう人間らしさというのは、社長ご自身のお人柄のことでもありますが、それは自分以外の人間に対する“人間観”でもあります
さながら、地に足を着けた人間観…と言えば良いでしょうか。人間を美化しすぎず、それでいて懐疑的すぎない絶妙な信頼感の持ち方です。
昨今、個々人の多様性を重んじる風潮や上下関係がなく個人が自由に動く組織論など、人間観を相当に美化した論調が見られます。
実際、とある社長は、現場が思ったように動いてくれない理由を「理念が浸透していない」と考え、理念浸透に取り組まれている企業もあります。
ただし、それだけで現場が動くようになると考えるのはいかがでしょうか。残念ながら、そんなこと100年続けたところで実現するはずもないことです。人間を美化しすぎています。
少し話は逸れましたが、組織を構成して動かしていこうとする上で、こうした人間観というのは、組織論の前提となるものです。
どんな人間観を持って組織を構成するのか…、この前提認識が間違っていたならば、第一ボタンを掛け間違っていますから、その先、いくらツジツマを合わせようとしたところで、合うはずがありません。
能力向上、競争意識、達成意欲、人間関係維持、自尊心、承認欲求…、組織を構成するメンバーのこうした人間観を地に足の着いたレベルで認識合わせしておくことが大切です。
こうしたことに配慮して経営していると、人間臭い、どこか古い…と思われるかもしれません。あるいは、個人の思想・考え方を侵害していると感じるかもしれません。
しかし、そもそもこうした人間観というもの自体、育てていく必要があるものですし、鍛えていく類のものです。生まれた時から与えられたものではないのです。
そしてこうした人間観というのは、他の人間との接触から影響を受けて育っていくものです。ところが、仕事上の付き合いというのは、いわばフォーマルなお付き合いですから、どうしても公式的になりがちです。
そうした現実を踏まえれば、もっと人間観を育てていこうとするならば、もう少しインフォーマルな場でのコミュニケーションが必要になってきます。
そうした際、昔から用いられてきたのが「飲み会」です。コンパと呼ぶアレです。
従前、仕事終わりに会議室で缶ビールと乾きモノといった気軽な場がインフォーマル感の演出として良しとされてきましたが、昨今、こうした飲み会は難しい時代になってしまいました。
そうであるならば、経営計画発表会、年初めの安全祈願祭、年末慰労会など、会社の公的なイベントとして開催し、何としてでもメンバーが交わる機会を作って、そこで人間観を育てようとすることはとても大切な経営者の仕事です。
会議、朝礼と同じように社内コンパを大切にしていますか?
社内コンパで人間観育成を目指していますか?