【第475話】クラファンで取り返しのつかない間違いを犯さないための経営知識
「新製品をクラウドファンディングで売る…というのはどんなものなのでしょうか?」と社長。
最近では、国立科学博物館がクラウドファンディングを実施し、目標金額1億円に対して、9.2億円も集まったことで話題となりました。
クラウドファンディングとは、クラウド(大衆)からファンディング(資金を集める)する仕組みのことです。
クラウドファンディングをサービスとして提供する企業があり、大抵の場合、そうした企業のサービスを利用してクラウドファンディングが行われます。
実際、とある経営者が食事をしながら「返礼リターンの額って、2割くらいでいいらしいよ…」などと話されているのを聞いたこともあります。
クラウドファンディングの黎明期には、出資を募るような出資型のものが実行されていました。ただし、こうした出資というのはいわゆる株主であり、どこの誰が株主になるか分からないことや、その後の管理が難しいことなどから、現在ではこうした使い方はほぼ見られなくなりました。
そして昨今見られるのは、寄付型と購入型です。
寄付型とは、前述の国立科学博物館のクラウドファンディングのように「地球の宝を守れ」といったスローガンに賛同を求めて寄付を募るものです。
そして、購入型とは、新製品などを早期割引といったことをテストしながら販売するものです。
昨今、CSR活動、ESG投資、SDGs…、経営に対する社会要請の高まり、経営で社会課題を解決する…といったソーシャルビジネスの立ち位置を取られる経営者が増えています。
こうした経営者のビジネスピッチに対して、採算性や継続性といった指摘などしようものなら、「自分たちは儲けようとなど思っていないので…」、「このビジネスの意義は事業性ではありません」といったお答えが返ってきます。
こうした心意気はとても尊敬に値することですし否定するつもりもありません。ただし、何らかの形で採算を創っていかなければその大切な事業を続けていくことはできないのではないですか…と、シンプルに指摘しているだけです。
我々はこうした社会課題解決のために活動していきますので、みなさま応援してください…、こうした姿勢というのは経営意識が募金型です。この経営意識の問題は、立ち位置が第三者的だということです。
経営に正解などありませんから、こうした募金型の経営意識を否定するつもりもありません。しかし、少なくとも募金も何度か続けば、「僕はもう募金したから」という人が増えて、募金は集まりにくくなっていくでしょうから、それで大丈夫ですか…と伝えしています。
また、新製品のテスト販売をクラウドファンディングで実施するとして、購入型で実施すべきところ、見様見真似で間違って募金型で実施してしまったならばどうでしょうか?
新製品のテスト販売という明確な目的意識を持って、購入型で実施するのであれば、実施する意義も見出せてくるかもしれません。
新製品が、お客様は新製品のどんなところに注目するのか、どのような価格であればどの程度売れるのか…こういったテストを実施する目的があれば、そのテスト料としてクラウドファンディング手数料も見合ってくるかもしれないからです。
もし、御社の経営がお客様に製品サービスを提供してお客様からその対価を得るようなフツーのビジネスであるならば、どんなに苦しかったとしても募金を集るような行為は慎まなければなりません。
立ち位置を間違わないことです。お客様に奉仕しお客様から直接その対価を頂戴するのです。お客様の前に正々堂々と立ち、正当な対価を頂戴する立場を堅持することが大切です。
第三者からの募金など当てにせず、ご自身の足で立ち続けようとする意識が大切です。
お客様の正面に立っていますか?
逃げ腰で営業トークが第三者に向いてしまっていませんか?