【第459話】利他の経営と付加価値創出の実務
「なんでこんなに社会性みたいなことを言う経営者が増えちゃったんでしょうね」と懇意にさせていただいている経営者。
まず最初にお伝えしておかなければならないのは、こちらの経営者、地域でも著名なほど、ちゃんとした経営をされている方です。
こうした方が、なぜ一見、反感を買うかもしれないこうした発言をされるのか…、そこには根深い問題提起があります。
当然のことながら、我々、経営者は世の中に一定の商品サービスを提供することで、その対価を得て生きています。
一方、こうした対価を得ることについての誤解が蔓延しています。それは、「儲ける」ということに対する誤解です。
例えば、若い経営者の新事業相談、「私は儲けるつもりはないんです」といったことを口にされます。
自分ならば、ご自身の能力を以てすれば、歴史的なビジネスを起こす大金持ちポテンシャルを持っているけど、そういうことよりも世の中の問題に応えていくことを優先します…と。
若い方はこれで良いと思います。本当にこれからの可能性に満ちていますし、多少なりとも根拠がなくても自信を持つことは大切なことだからです。
ただし、こうした誤解の延長線上で、社会問題を解決したい、古い業界体質を改革したい、この地域に雇用を生み出したい…といったお客様不在な主張をまあまあの年齢になってまで言っているとすれば、それはとても大きな問題です。
その理由は単純です。もうそこそこの年齢であれば、そうしたことを少なからず実現していなければならないからです。
問題は、そうした主張をされる経営者が、募金活動のボランティアといったことを美徳とされる傾向があることです。
募金活動のボランティアも素晴らしいことですが、それは募金してくれる人が居て初めて成り立つ話です。
そうであるとすれば、ご自身の時間を募金活動のボランティアに費やすのか、それともその時間で働いてその稼ぎを募金する側になるのか…という選択肢があることも理解しておくべきことです。
そもそも、“儲け”とはそれ相応の努力をもって対価を得ることであって、あぶく銭を漁ることではありません。
あるいは、“儲け”とは、相応に得た対価について、いささか謙虚さを持って評価すれば、十分と思える一線を超えて得た部分と捉えることができるでしょう。
そうした部分を世の中に還元する…といった意識があれば、募金活動のボランティアよりも、むしろ募金する側に立つ意識の方が大切であることに気付くことができるでしょう。
人それぞれ能力があって、それを世の中に提供することで、対価を得ています。ただし、お客様から頂戴するお代金は募金ではありません。ご自身の能力価値提供への対価です。その能力価値を高めるからこそ得られる対価も大きくなるのです。
そうした原理原則をさておいて、募金活動のボランティアを美徳とすることの問題は、自社の経営においても同じことをしてしまうからです。
自社は素晴らしい事業をやっているので募金してください…とお客様に言ってしまうことです。
そして、素晴らしい意義ある事業だと、従業員にもボランティア精神を求めてしまうことです。従業員の持つ稼ぎポテンシャルの一部を自社に寄付することを求めてしまいます。
経営とはお客様活動であり、持てる能力をお客様のために応用することで対価を得るものです。その創意工夫の度合いが付加価値だと心しておくことが大切です。
お客様のためにも、稼ぎ、儲けを真剣に追求していますか?
利他を尽くすために自社の能力能力向上、付加価値創出に挑んでいますか?