【第398話】経営を伸ばす打ち手は1つしかありません。
「おかげさまで、忙しくさせていただいています」と、私が泊っている旅館の部屋に一升瓶を抱えてきてくれました。
こちらの経営者、歴史ある事業の後継者なのですが、お会いした数年前、当時は打ち手がことごとく空回りして、苦戦を強いられていました。
ところが、今は…、ある意味、独り勝ち。同業者の苦戦が続く中、フル稼働されています。
そもそも、経営者であれば、次なる打ち手について、例え今が順調であっても、考えていないということはないでしょう。
そういう意味で、次なる打ち手は常に「考えてはいる」のですが、この考え方の違いでその努力に対する成果に雲泥の差が生まれてしまいます。
面白いのは、新興企業というよりも、歴史ある企業、老舗、大御所経営者の経営において、例えば10年にわたって売上が落ち続けているといったことが起こります。
当然のことならがら、何もしていないわけではなくて、様々、考え得る打ち手は繰り出しています。それならば、何か一つくらいは当たりそうなものですが、全く当たらないのです。
なぜ、こうしたことが起こるのかといえば、そこには厳然たる法則が存在します。当たらない理由があるのです。
ちなみに、ここで新たな打ち手というのは、いわば新たな顧客の獲得、新たな売上の獲得を意味しています。
ではなぜ、新たな打ち手が新たな顧客の獲得につながらないのでしょうか。打ち手が当たらない理由、その上手くいかない法則とは何なのでしょうか。
この答えは実に単純な話なのです。それは、今のままで新たな顧客を獲得しようと考えているということです。
大切なことなので、もう少し補足すれば、今できることの範囲で何とかならないかと願っているに過ぎないということです。
こうした状況で、営業スタッフの尻を叩いたところで、どうにもならないのです。あるいは、情報発信を強化したり、広告を打ったところで、まず新たな顧客の獲得にはつながらないでしょう。
それは、打ち手の根っ子のところで、仕事ください…と言っているに等しいからです。仕事ください…と広告して、お客様の方が、御社の仕事を考えてくれることなどありません。
今、お客様の需要は一応満たされています。そして、足りなくなれば、既につながりのあるごひいき先、購入先、取引先があるのです。
ちょっと考えれば分かることですが、打ち手を考える際、新たな顧客の獲得を目指すのであれば、新たな顧客に対してご提案となるようなレベルで商品サービスに一旦立ち返って、アレンジし直すことが欠かせません。
どこかでそう分かりつつも、この立ち返る勇気を持てないが故に、今のままをそのまま売ろうとします。このままで何とかならないか…気持ちの根っ子のところでそう考えています。
これは、今の能力をそのまま新たなお客様に売ろうとしているという意味で“請負型”の打ち手といえることです。当然のことながら、仮に新たな顧客を獲得したとしても、その理由は価格だということです。
真の意味で、報われる価格で新たな顧客を獲得したい…、それならば、そうしたお客様に向けた価値あるご提案として、商品サービスを考え直さなければならないのです。
ここで、打ち手が“請負型”なのか“企画型”なのかは、すぐに分かります。新商品サービスが「自社でできることの範囲」に留まっているか、「お客様の事情範囲」にまで踏み込んでいるかの違いです。
請負型の打ち手で、仕事ください…と叫んだところで、その需要はすでに他社が埋めているのですから、新たな仕事、新たな顧客など来るはずがないのです。
今のままで何とかならないかと考えていませんか?
経営者としてお客様の事情に想いを馳せて企画しませんか?