【第368話】モノづくり経営における差別化の王道的な生み出し方
「違いとか差別化とか言われますが、そういうことだったんですね。製品コンセプトだけでなく、ホームページもパンフレットも、全部、変えないとダメですね」と社長。
短いお打合せながら、終わり頃にはこれからやるべきことが見えてきたとのことで、頭の中がグルグルしてると目を輝かせておられます。
さながら、もう走りたくて仕方ない競走馬のよう。経営者というと、とかく後ろで構えて世の中を見抜く名伯楽と思われがちですが、中小企業経営者の実際とは、生まれ育ちが最前線、大将でありながら先鋒気質の方が多いのは面白いことです。
実はこちらの社長、過去にドン底を経験されており、明るくてパワフルな立ち振る舞いの奥には、今の経営に魂のこもった本気度をお持ちです。
ます、前提として知っておくべきモノづくり経営の難しさとして、景気循環があります。これは、自社の努力だけでは何ともならないほどの大波があるということです。
この大波は、せっかくの良い舵取りの努力をも飲み込む威力を持っているため、時に、良い舵取りであっても転覆を余儀なくされることもあり得るということです。
そういう意味でも、大波、荒波の中にあって、舵取りは間違っていないという確信を持って進めることが大切であり、そのためには判断にあたっての拠り所、判断軸が必要です。
そもそも、正解などない事業経営の世界にあって判断軸とは…というそもそも論的な疑問があります。
このことについて答えるならば、それは目指すところ、目的目標によって、判断軸は限りなく違ってくるということです。
そんなことは重々承知の上で、独自路線の成長を目指すならば…という視点から叫んでいます。
モノづくり経営が独自路線の成長を目指す上で、まず理解しておかなければならないビジネスの構造的な違いがあります。
それは、モノづくり経営と販売流通経営の違いです。販売流通経営であれば、ここでしか買えない、他では買えない、当社からしか買えない…は差別化といえることです。
これは言い換えるならば、ここら辺にはない、手に入りにくい…といったことが差別化の源泉になっていることを意味します。
これは、販売流通経営の差別化の源泉が、お届け力にあることから明らかです。例えば、ハワイで人気のパンケーキが日本初上陸…は、パンケーキ屋さんというモノづくり経営ではなくて、人気のパンケーキを持ってきたという販売流通経営といえることです。
この視点から、モノづくり経営を考えるならば、販売流通経営のお届け力のもっと手前側の役割を担っていることが分かります。
つまり、ここでいうならばパンケーキ自体を考えなければならないということです。
では、パンケーキという昔ながらの成熟商品で差別化を目指そうとしたならば、どういったことが考えられるのでしょうか。
その答えは実にシンプルです。小麦粉、卵、焼き方、食べ方…、そういったありとあらゆる材料、調理器具、製法を駆使した上で、これまで以上の価値軸を打ち出したパンケーキを創ることです。
おカネで買えるモノのその先にこそ本物の差別化があります。この意味で差別化とは、これまでの先にあるものであって、これまでとは“違う”ということではありません。
モノづくり経営における差別化とは、まだ誰も到達していない領域…という意味です。だからこそ差別化とは届く先がみな違うという意味で限りなく独自性と同義であり、そこに至るためには自問して自答する以外に道はないのです。
モノづくり経営における差別化とは、他社と比べることなどそもそもできない独自の思想がモノ化されていることです。だからこそ、答えを探さず、モノに込める思い、設計思想を探求する意識が大切です。
新製品の違いは、造り方ではなく設計思想にありますか?
差別化が探求の先に宿る独自性になっていますか?