【第364話】売れないのはウリ文句が間違っているから

「この〇〇機で、地球温暖化問題の解決になるんです」と社長のプレゼンには熱が入っています。

 

技術系の社長だけあって、それを実現している要素技術についても、こだわりをお持ちですが、どこかこのプレゼンの全体、文脈、論旨…に、飛躍やムリ筋を感じてしまいます。

 

ちなみに、テックベンチャーと呼ばれる挑戦的な技術経営にあって、本当に自社技術と呼べるような技術要素の製品サービスを持っている企業は稀で、多くが既存技術をテーマとした流通販売業であるという実態があります。

 

そんな中、こちらの社長はご自身の着想技術に基づいて、それを製品にまで仕上げておられますので、まずはこれまでのご努力に頭の下がる思いでお聞きしました。

 

ここで、大きな問題は、こちらのビジネスが、地球温暖化問題という顕在化した“必要性”をウリ文句の中心に据えていることです。

 

大切なことなのでもう少し補足すれば、地球温暖化問題という必要性のテーマが大きすぎるために、そこに便乗しているような文脈になってしまっているのです。

 

ちなみに、我々、民間企業の事業経営とは、お客様活動のことです。したがって、正確にいうならば、この設備がお客様のビジネスに役立ち、延いてはその普及拡大が地球温暖化問題の解決にも一役買うことにつながっている…という手段目的の関係を認識してウリ文句を組み立てるべきなのです。

 

大きな社会問題、顕在化した必要性、ニーズ…というのは、常にビジネスチャンスであることは間違いありません。

 

一方、社会的な必要性が強くなるほど、売上にはなりやすいものの収益性が成り立ちにくくなる、という構造があります。

 

例えば、水道料金を値上げする…といった際、どれだけの反対運動が起こるかを思い出していただければ分かることです。

 

多くの人が、日々、ガソリンよりも高いペットボトルの水を買っているのにも関わらず…です。

 

こうした文脈、手段目的が逆転してしまった状態で、「社会的に求められていることなのでニーズはある、よって、やるべきだ」と訴求したならば、お客様はどうお感じになるか…ということです。

 

その熱の入ったプレゼンを、今、お客様は「みんな知っているのにやらないのは採算にのらないからでしょ」、「じゃあ自分たちでやれば…」と思いながら聞いているということです。

 

根本的な問題は、自らが提供できる手段のレベルに対して目的である必要性のテーマが大きすぎることに起因しています。

 

このため、大きな社会問題、顕在化した必要性から「やるべきだ」を訴求した営業トークというのは、お客様のドン引きを誘うのです。

 

むしろ、自分たちには「ここまでしかできない」、あるいは「ここまでならできる」と具体的な貢献範囲をお示しすることが大切です。

 

お客様に訴求すべきは、社会問題の解決や必要性から商売になるといったことではありません。お客様の発展に「弊社はこのようにお役立ちできます」という具体的な貢献範囲を示すことなのです。

 

大切なことなので総括してお伝えすれば、事業経営とはお客様活動であり、それが延いては世の中のためになっているという手段目的のつながりになっているということです。

 

このため、大きな社会問題、顕在化した必要性…といった視点から自社製品の購入を訴求したとしたならば、それは「こんな大切なことをやらないなんて…」とお客様に説教しているに等しいのです。

 

営業トークでお客様に訴求すべきことは、自社が提供できる手段に見合ったリーズナブルな目的達成のご提案であり、延いてはそれが社会問題の解決にもつながっている…という手段目的の関係を間違わないことが大切です。

 

自社製品で貢献できる範囲を具体的に提案していますか?

訴求する必要性は手段に対してリーズナブルですか?

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