【第329話】渾身の新商品をフツーで終わらせない独自化戦略の進め方
「いい商品なんですが、なかなか伝わらなくて」、「そのために大学と連携してデータを蓄積しています」とのこと。
確かにユニークな商品であり、それを証明する様々な性能データが揃っています。ところが、残念ながらビジネスという観点からはフツーにしか見えない…ということが起こり得ます。
特に、新商品、新サービスともなれば、着眼が新しいほどに難しさがあり、「“新しい”から売れる」こともあれば、「“新しい”ことで売れない」ということも起こり得ます。
この“新しい”にも色々とあって、単に作り手にとって新しいだけであったり、売り手としてここらへんに無いから持ってきただけであったりします。
このため、本当に新しい商品を創った場合、新商品の開発に自信があるため、新商品がカタチとして出来上がったことで達成感が生まれ、完成した、売れる…と思いがちです。
ところが実のところ、ビジネスにおいて、独自性、オリジナリティ、ユニークネス…といった新しさのエッセンスというのは、出来上がった商品サービスそのものだけで表現しきれるものではありません。
どんな新商品も物理的に出来上がっただけならば、それだけではまだ“フツー”でしかないということは、ビジネスの原理であり、そこには確固たる理由があります。
それは、この新商品がお客様にどんな新しいをもたらしてくれるのかを説明できなければ、これまでを超えていない、延いては今の商品を超えていない、ということで、どれだけ優れた新商品であってもフツーとなってしまうのです。
こうした中、新商品を売り出してみたけど、全く売れない。何か足りていないと気付き、それを補完しようと、単に開発ストーリーを付けてみたり、特にキレイなお話を付け加えることで事態は更に悪化します。
その理由はシンプルです。お客様からどんどん遠のいてしまうからです。ご自身の生活と遠いところの文化や芸術といった世界のお話となり、お客様のお財布を開くことなく勉強になりましたに終わってしまうことは明らかです。
先ほど少しだけ触れましたが、ビジネスにおいて、独自性、オリジナリティ、ユニークネス…といった新しさのエッセンスというのは、出来上がった商品サービスそのものだけではなくて、その新商品がもたらす効果効能の新しさに拠るということです。
とてつもなく新発見な技術を用いたところで、そこからもたらされる効果効能が、これまでと同じ程度…となれば、何も新商品を買わなくてもこれまでの商品でいいのです。
もっと補足すれば、お客様にとって新商品を買うということは、ある意味で新たなリスクを伴うことでもあるということです。
そのことに想いを馳せることなく、良い新商品だから買ってくださいなどと言ったところで、そのリスクを超えるほどの新たな効果効能を見出すことができなければ、お客様の心が動くはずがないのです。
新商品がもたらす“独自性”とは、新商品・サービスそのものの違いではなくて、新商品がお客様にもたらす新しい効果効能で語られるべきことです。
そういう意味で、新事業を立ち上げる際の“独自化”とは、お客様へもたらす効果効能を最大化する視点から、どのような新たな切り口が見出されているのかということです。
より具体的には、新商品の姿形やスペックだけでなく、設計思想の違い、生産効率の違い、販売提供方法の違い…といった事業ピースの全体にわたって一気通貫している新たな切り口こそが、ビジネスとして“新しい”の概念なのです。
独自性ある事業コンセプトとは、まさにこの新たな概念のことであり、この概念が新たな市場と売上利益の輪郭を生み出します。よって、この独自性が新たな成長発展をもたらすのだということを心しておくことが大切です。
渾身の新商品は独自性を宿していますか?
独自性は、概念、コンセプトとして語られていますか?