【第325話】経営者のための企画力3つの視点
「おかげさまで、コロナ禍でも売上を伸ばすことができました。まだまだですが引き続き精進します」──、一昨年にネット直販体制の構築を中心に事業再構築を後押しさせていただいた社長から、新年早々、嬉しいメッセージが届きました。
こちらの企業は、すでに良い商品をお創りになっていましたが、その商品をお客様の価値に転換しきれず、商品の核となる価値が見えているようで見えてこない…。いわば、在るんだけど霧の中といった感じでした。
このような状況で販売拡大を考えようとすると、どういったお客様にどのようにお届けすればよいかが見えてこないために、どうしても既存の流通チャネル、販売網に乗せてもらおうとすること以外が選択肢から消えていき、営業が流通業、代理店へのお願いベースになりがちです。
営業・販売が自立しておらず他社任せのお願いベースになると、経営数字の作り込みは、それら代理店次第、お願い頼みになってしまいます。このため、数字を積み上げようとしても、どうしても「エイやっ」となり、目標数字と呼ぶには根拠の薄いものになりがちです。
こういった状況というのは、決してダメな状況などではなくて、やっとここまで来た、途中にいる、新事業の成功まであと一歩…、“ちょっと生煮え”と考えるべきです。もうちょっと煮込めば、しっかりとした商売に仕上がっていくものです。
そういう意味で、経営者は常に今日の事業を煮込みつつ、未来の新事業も煮込んでいかなければならないという大変な立場にあります。
こうした状況にあって、着実に頭一つ抜け出していかれる経営者がいらっしゃいます。この経営者方には共通する能力があり、それが一定レベルを超えたところから一気に開花が進みます。
その能力とは、いわゆる「企画力」です。ありきたりに聞こえるかもしれませんが、これこそが、社長、経営者、事業家…の中核能力であり、経営に自主独立、独自性を宿すものです。
ちなみに、こういったことを背景に、弊社では「社外企画室」を事業コンセプトに掲げ、経営者の企画力強化を、プロジェクトチームに企画の推め方を、日々、渾身お伝えしています。
それはともかくとして、この漠然とした「企画力」ですが、こと事業経営という視点からいえば3つの構成要素から成り立ち、これらの構成要素は場面に応じて順番があります。
まず一つ目の構成要素が「価値化」です。この価値化とは、御社の商品・サービスがお客様にどういった価値をもたらすものなのかを考えることです。お客様側から見れば、価値とは商品・サービスを購入後、使用後にどういった状態を手に入れることができるのかということです。
足りてる時代、新たな価値を訴求できなければ、買う理由、新たな市場や売上は生まれないのだと、心の準備、準備すべき意識レベルを予め持っておくことが大切です。
続いて二つ目が「採算化」です。これは投資最適化とも呼んでいますが、設備を持つのか借りるのか、内製するのか外注するのか、販売体制は…といったコスト構造を検討するのと同時に、売価、販売ルート、広告効果…といった収益構造も検討し、最適な採算の姿を描いていくことです。
そして最後三つ目が「提案化」です。御社の新商品・新サービスを説明して「いかがですか?」と言うだけでは提案になっていません。提案を受け入れるかどうかを決めるのはお客様側であることを考えれば、お客様それぞれに向けて価値を伝えるアレンジ、買える状態を準備することが大切です。
新事業でも既存事業でも「価値化」が起点となりますが、その後の順番は異なります。新事業構築では「価値化・採算化・提案化」の順に進めますが、既存事業の再構築では、ある程度、現在の状況、特に今の費用構造を前提とせざるを得ないため「価値化・提案化・採算化」の順に進めていくことが肝心です。
採算が悪いからと、起点である「価値化」をおろそかにして、コストダウンや営業強化などに着手するのは愚の骨頂と言わざるを得ません。どちらも小手先の症状対応であり根本改革になっておらず、わずかばかりの延命策に過ぎません。
いつの時代も、一歩抜け出す経営者は、「企画力」で独自路線の成長を手にしてきました。不確実な今年こそ、もっと先行くチャンスです。迷いなく進んでいきましょう。
企画力視点から事業を構築していますか?
企画の煮込み、材料と順番は合っていますか?