【第326話】売れないのは知られていないから…?!

「正直…、こんなに売れると思っていませんでした」と、〇〇さんから言われたんだよ、と某社長。販売の好調を受けて嬉しい反面、複雑な感情が巡ります。

 

これを逆から見れば、「売れない」と思っていたということであり、社長としては「そう思ってたんだ」と落胆を覚える一方、「どうだ」の瞬間でもあります。

 

面白いことに、それを言っているのが誰かといえば、大抵の場合、プロジェクトメンバーのうち、営業・販売系の役割を担っている方なのです。

 

場合によっては、これが営業部門を統括する役員だったりすることもありますから、マジですか…と思いつつ、これが“大抵の場合”である以上、どんな企業でも起こり得る構造的な問題として考えるべきことです。

 

これが構造的な問題であるならば、「新事業、新商品を営業が売れないと思ってしまう問題」について、その構造を解明しておかなければなりません。

 

実のところ、営業担当者というのが、必ずしも販売のプロではないという実態があります。少し語弊があるので補足すれば、多くの営業担当者が既存取引先からの受注窓口の業務を“営業”と呼んでいるに過ぎないということです。

 

特に、モノづくり企業、技術企業、エンジニアリング企業の場合、既存の仕事が下請け的であるほど、営業とは決まった客先への訪問と注文処理になりがちです。

 

これは、いわゆるルート営業であり、注文の仕様や数量を調整して、最後、見積りで価格交渉…というパターンのもので、営業がいう「お客様を知っている」のお客様とは、「既存顧客」のことなのです。

 

よって、こと新事業、新商品・サービスともなれば、それは自ずと新規の顧客を開拓していくことであり、営業であっても未経験の領域なのです。

 

ですから、新商品の販売、新規顧客の開拓が既存顧客と比べて効率の悪い余計な仕事…という感情が生まれ、いつしか自分の中で売れるはずないという感情処理につながるのです。

 

そしてまた、新事業の立ち上げにあたり、技術系は「良い商品だから知ってもらえれば売れる」と考え、営業系は「誰も知らない商品だから売れない」と考える傾向が、この営業の売れるはずがない…という感情に拍車をかけます。

 

こうした状態の時、営業のお尻を叩いたところで売れないのです。そこを超えていくには、もう一歩進んだ下準備が必要です。

 

なぜ、その下準備が不足するのかといえば、その部分が技術と営業の中間に位置し、縦割り分業意識によって空白になってしまうからです。

 

その不可欠な下準備とは、「“商品”を知ってもらう」前に、「“価値”を分かってもらう」ための“説明”が必要だということです。

 

新しい商品であるほど、その商品がお客様にどういった価値をもたらすものなのかを、しっかりと説明できなければ、お客様が買いますなどと言うはずもありません。ましてや新たな取引先ともなればなおさらです。

 

本当に自信ある商品ならば、手元のパンフレットで、試しに何人か、何社かに説明して売れなかったとすると、それは知らないからでなくて、分かってもらえないからと考えるべきです。

 

このお客様理解の視点から、技術と営業の共同作業で新商品がもたらす“価値”について、伝わるレベルまで下準備することです。

 

「売れない」とあきらめる前に、ホームページ、ランディングページ、パンフレット、提案書…を見直してみるという下準備に一旦立ち戻ってみることが大切です。

 

この下準備、一定の確率で新規受注を獲得できるという状態を仕込んだ上で、知られるための方策に進むことで、営業効率を劇的に高めることができます。

 

知られるための運動量を増やす前にやるべき下準備があります。そして売れるとなれば営業は必ず売ってくれます。まずは一人目、一社目、売ってみせることが大切です。

 

売れない理由は「知られていない」だと思っていませんか?

新商品の“価値”を説明できていますか?

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