【第306話】激変にあって自ら仕掛けきれないと感じたら考えるべきこと
「絶えず創造力を鍛えるしか…ですわ」と、尊敬する某社長。この創造力を企業の免疫力だとおっしゃいます。
当然のことながら、事業活動というのは、創造力、創意工夫…こういったことなしに成り立つはずもなく、多かれ少なかれ、自社なりの創意工夫が施されることによって事業が成り立っています。
しかし一方で、この経済的な激変にあって、独自性あふれる打ち手を次々と繰り出せている企業もあれば、延命の守り一辺倒で留まってしまっている企業もあり、明らかな違いが浮き彫りになっています。
この違いが生まれることについて、確かに、でもなぜ…と、じっくり考える時間などないというのが忙しい経営者の毎日でしょう。
実際、存じ上げている企業では、矢継ぎ早に打ち手を繰り出して、いち早く回復基調を実現していたり、激変以前からの仕込みが実を結び、対応に苦慮するほどの引き合いがあったり、はたまた災い転じて…のような企業もあります。
もちろん、業種業態といった構造的な事情があることも重々承知していますが、こういった差、激変への対処レベルに違いが生まれてしまう原因というのは、激変前から分かっていた…ということについてお伝えします。
ちなみに、突然ですが「仕事、ください」と広告を打ったとして、新たな仕事を獲得できるでしょうか?
多くの方が、「アホな質問をするな」、「ムリに決まってるだろ」、「広告費をドブに捨てたようなもんだ」とご指摘されることでしょう。
ではなぜ、そうご指摘されたのですか…、とお聞きすれば「そんなこと分かり切っているだろう」と、このことを論理的・構造的に説明できないのではないでしょうか。
面白いことに、優れた経営者はこのことを分かっています。もう少し補足すれば、激変にあってこちら側から仕掛けて新たな受注売上を獲得するためには、大切な条件があるということを本能的に分かっているのです。
まず、ビジネスにおいて“仕掛ける”ということについて考えてみれば、自ら動くということだけでは足りず、その動きが売上利益に結び付くことを意味しています。
このため、先ほどの「仕事、ください」という動きは、確かに自ら動いてはいるものの、それだけでは売上利益に結び付かない、やらないよりマシ…非効率に終わってしまうということを経営者は分かっています。
ところが、その非効率の解消に向けて、どう対処すればいいのかまでは分かっていないために、闇雲に激変以前と同様の行動を繰り返してしまう傾向があります。
当たり前のことですが、動きに対して成果レベルを上げようとするならば、創意工夫のレベルを上げていかなければなりません。
「仕事、ください」という動きは、自社の能力・技術、今の創意工夫のレベルで対処しようとしています。よって、動きに対して成果が小さいのです。
これを逆から見れば、この能力・技術を応用して、製品やサービス、さらには提供方法といったビジネスとして創意工夫のレベルを上げれば、より大きな成果に結びつく可能性が高まります。
激変にあらずとも、普段から創意工夫のレベルをより高次で行っている企業は、自らの動きでお客様を刺激し、新たな売上利益を生み出す思考訓練がなされています。
一方、普段、能力・技術をそのまま売っていている企業は、創意工夫の意識がそのレベルにしかないために、激変にあって、工夫している、行動している…とはいえ、その創意工夫の視点が今までと同じレベルであるために、仕掛けきれないということが起こるのです。
なかなか自ら仕掛けきれないと感じたならば、一旦立ち止まって、能力・技術をお客様の価値に転換する意識で、創意工夫のレベルを今よりも上げて対処する意識が大切です。
今の創意工夫レベルで対処しようと行動してしまっていませんか?
一旦立ち止まって、創意工夫のレベルを上げようとしていますか?