【第290話】激変にあって事業を再加速させる早めの準備判断の進め方
「やはり、10年に一度は何か起こりますね」とおっしゃるのは、社長歴まもなく20年の豪傑社長。「参った、困った…、でもやるよ」と、リーダーとしてファイティングポーズを崩すつもりは毛頭ありません。
経営環境の激変にあって、まず大切なことは、このようにファイティングポーズを崩さないことです。
激変にあって端的な経営者の意志決定とは、進むのか、降りるのか、諸行無常の決断です。負けない、頑張る…といった感情レベルを超えた具体的な判断が欠かせません。
一旦、降りる…ということであれば、損切で撤退し、以降の新たな機会に賭けることもまた英断です。
そして無論、霧の中であっても進む…と決めたならば、ブリッジ資金を最大限に手当てして、「続けていくこと」自体に本気で取り組んでいかなければなりません。
なぜ、こんな単純な二択の意志決定について、あらためてお伝えしているかといえば、その理由は簡単です。とても大切なことだからです。
実のところ、多くの店じまいが「戦意喪失」によるのです。こういった際、表面的に見えてくるのは確かに資金ショートや販売不振といったことかもしれません。
しかし、その本質をたどれば、おカネや人の苦労で、精も根も尽き果てた…戦意喪失というのが根因なのです。
一方、どのような窮状にあろうとも、目に光を宿し、立ち上がり、再起してきた方々も存じ上げています。戦意さえ喪失しなければ、一旦、どのような状況になろうとも、その先に可能性は必ず存在します。
少し話はそれましたが、ではこの霧の中に向かって進んでいくために、どうやって備えればよいかということについてお伝えしていることがあります。
それは、「“工学的”に判断する」ということです。工学的に判断するとは、科学的とも少し違います。
まず、このコロナショックにあって、科学的な解決状況とは何かといえば、ワクチンが開発されること、治療薬が確立されること、治療法や体制が整備されること…といった、いわゆる医学的な判断基準によることとなります。
確かに解決ではあるのですが、これには1年以上、あるいはもっと要するかもしれませんし、場合によってはできない可能性だってゼロではありません。
よって、こういった中にあって、早目の動き出しに必要となるのは、これまでに分かった情報、法則に基づいて対応策を決めながら逐次的に進んでいくスタンスです。
そのためには、工学的なスタンスが役に立ちます。ここで大切なのは「法則」です。例えば、万有引力、重力がなぜ発生するかということについては分からなかったとしても、それを法則として用いることができます。
ウィルスであれば、そのもののRNAや特徴といったことよりもむしろ、感染の仕方、防護、早期検出…といった法則さえ分かれば、対応の仕方があるということです。
早目に動き出すためには、判断の拠って立つところが大切です。科学的で論理性ある対応判断が必要ですが、我々経営者にとって大切なのは、完全に分かるまで待つという医学的な判断ではなく、分かった法則を用いながら前に進もうとする工学的な判断です。
そして、この工学において未来を予測しようとした際、大切な概念があります。それは“情報増大系”という概念です。数学的に言えば、時間とともに情報量が増えるといったことですが、現実世界でいうならば「そこまで行けば分かるさ」ということでもあります。
つまり、例え今分からないことがあったとしても、時間と共に情報量が増えていくことを前提に準備を進めることです。これにより、一歩先行く準備を整えることができます。ウィルスへの本質的な対策を待たずとも、戦いようはあるのです。
進みさえすればその先が見えてきます。“情報増大系”という前提をもって、立ち止まらずまずそこまで行こうとする意識が大切です。
工学的な判断で準備を進めませんか?
情報増大系をイメージして逐次的に進んでいきませんか?