【第283話】挑戦ビジネスで結果を出すために大切なプロ意識
突然ですが、バイクのレーサーは、レースに参戦するにあたって「転んでも良い」と考えて走っているでしょうか?
レース参戦の目標は、優勝、ポイント獲得、完走、予選通過…といったことで、レーサーの成長ステージに応じてそれぞれかもしれません。
ただし、これらの目標に共通することがあります。それは、「ゴールする」ということです。どんな目標もレースで「ゴール」しなければ絶対に達成することができないことです。
そうであれば、「転んでも良い」という考え方は、いかがでしょうか…ということです。目標達成に対して許容されない、意識として甘えがあるということをお分かりいただけるものと思います。
一方、レースで最速ラップを達成しようとすることは、ご自身の極限に挑戦していくことでもあります。このため、コケる可能性は著しく高まっていくことは間違いありません。
では、そういったトレードオフの状況にあってこそ大切になってくるのが、自分としての考え方を持ってレースに出ることです。実際、一流のバイクレーサーは早くなりながら転倒確率を下げています。早いだけでなくコケないのです。
このことで分かるのは、極めて逆説的に聞こえるかもしれませんが、「結果を出す」ということは「コケない」ことが前提になっているということです。
ところが…、ビジネスにあたって、失敗が当然、コケるのが挑戦の証、コケても良い…、かのように語られることを耳にすることが増えました。
こういった話ぶりを耳にした際、その経営意識に対して、違和感を覚えます。
この違和感が生まれる理由は何なのか…と考えていくと、一つの結論にたどり着くことができます。
それは、レースに出ることが目標の人と、レースで結果を出すことが目標の人との違いです。
これは、行動目標だけの人と、結果目標を持った人の違いということです。言い換えるならば、参戦時点で持っている目標意識の根本的な違いです。
とても残念なことに、「私はこんな立派なことをやっている」という行動目標だけで、ご自身の経営を語る方が増えています。
そして、「この人、結果を出すつもりないな…」ということは不思議と分かるものです。そうであるにも関わらず、そういった方が増えているのには理由があります。
それは、「ビジネス」と呼ぶものが二分化してきているからに他なりません。この二分化とは「採算に乗せるという“結果”を目標としたビジネス」と、もう一つは「採算に乗らないことに“行動”することを目標としたビジネス」です。
大切なことなので、もう少し補足すれば、お客様への価値提供の対価から採算を成り立たせようと挑戦するビジネスなのか。あるいは、目標が行動にあって、制度的な支援を前提とした採算に乗らないビジネスなのかの違いということです。
経営が経済活動を通じた社会貢献である限り、ビジネスの採算を成り立たせることができているかどうか…、これは、まさにビジネスがコケたかどうかを意味することです。
少なくとも価値貢献ビジネスで、独立自尊の経営者であろうとするならば、採算を成り立たせること、コケないことを前提に目標に対して“結果”を出していくことは、挑戦者であろうとするための絶対条件です。
「採算を創る」というプロ経営者の世界にあって、こんなに努力しました、こんなこと頑張りました、仲間みんなで頑張ります…といった行動目標だけで褒めてもらえるような世界ではないということについて認識しておくことが大切です。
経営者であるならば、掲げた目標に対する“結果”に泥臭くこだわっていかなければなりません。そして、“結果”を出していくために大切なことは、その前提として独立採算を成り立たせていくこと、つまり「コケない」ことへの執着が大切です。
挑戦目標が“結果”ではなく“行動”になってしまっていませんか?
前提として、絶対に「コケない」と心していますか?