【第225話】高収益を実現する入口の立ち方
「トップ3%の意識が必要」と仰るのは、受託開発を行わないと決めて、全て自社開発のアプリケーションで勝負しているIT企業の社長。「私は5%だと思っていますので、3%は厳しい見方ですね」とお伝えすると、ニヤッと笑いながらも目には勝負師の闘争心がにじみます。
トップ3%というと、昔懐かしい偏差値でいうならばちょうど70くらいでしょうか。これは、経験的に考えてなかなかの水準です。難関国家資格の合格率が、目指す人の5%程であることを考えても、トップ3%というのは、相応に熾烈だろうなということが容易に理解できます。
ところで、世の中には素晴らしい企業が数多く存在します。例えば「収益性」で見るならば、売上高経常利益率で10%を超える企業が1割も存在します。そして何と、利益率30%超えの企業が3%も存在するのです。
前述の社長が仰るトップ3%という考え方と、こういったデータというのは感覚的にも一致するから不思議です。
また、とある製造業の社長はこう仰います。「他社にでもできる仕事は他社よりも安く、他社にできない仕事で稼いでいく」。あるいは、別の企業の社長は「製品群の3割を新製品とする目標を掲げている」と仰います。
こういった意識から、ビジネスという勝負の世界で、どういったことが繰り広げられているのか…を伺い知ることができます。
当たり前のことですが、一万円札を一万円で売ったところで、商売になっていないことは明らかです。一万円でお米を仕入れて、それを日本酒に転換して三万円で売るから、そこに付加価値が生まれ、利益を生むのです。
つまり、事業経営の収益性というのは、この転換効率、付加価値を高めようとする創意工夫によってもたらされるものです。
ビジネスの世界において、「売れる」ことは大切ですが、一万円札を一万円で売っている限り、「利益」は生まれないのであって、売れる以前に「付加価値」を生み出す転換を考えなければなりません。
そうだと分かっていたとしても、世の中の企業が、この付加価値向上の階段を着実に昇っているか…というと、残念ながらそうではありません。
こういった、投入に対して付加価値を生み出すことを考える中で見過ごされがちなのが「人件費」です。
人は働かなければ収入にならないため、働いたことで現金を得ると、あたかも収入を得たと感じてしまいます。
確かにそのとおりなのですが、機会費用として、元々その人の持っている労働力が1万円の価値を持っていたとして、その労働対価が1万円だったとするならば、それは1万円札を1万円で売っているのと同じではありませんか、ということです。
フツーの人ならそれで良いのですが、これが経営者であるならば少し問題があるのです。労働投入に対して、それ以上のリターンを生んでいないのでは…と申し上げています。
労働力を現金化するだけであれば、そこそこ誰にでもできることであって、経営者であるならば、労働投入以上の価値を生むことに挑戦していかなければ、本質的にビジネスという勝負の土俵に乗っていないのだと認識することが肝心です。
ある意味、そういった労働力の現金化から利益を得ようとする行為は、分配によってはむしろ搾取とさえいえる構図を生んでしまいかねません。
経営者であるならば、何に挑戦しようとしているのか…、投入以上のリターンを生む転換戦略、付加価値を生むビジネスに挑戦しようとする意識が大切です。
挑戦の中身…、単に売上を伸ばすといったことでは測りきれない経営の質的向上、資金、設備、労働といった投入以上のリターンを生む転換効率、付加価値を生み出そうとする挑戦意欲が、真の成長起点、高収益実現の入口です。
高収益を目指して「付加価値でトップ1割」を意識していますか?
投入を上回るリターンを生むことに賭けていますか?