【第214話】本物の経営は勝負事

ある企業が日本初となる製品開発に成功しました。その製品は、まだその企業でしか作ることができません。販売先も見えていますから、当面は独占ということになります。また、ある企業はこれまでにないほどに独創性が高い企画商品を完成させ、間もなく販売を開始します。

 

このように聞いていかがお感じでしょうか?

 

自社で新製品・新サービスを生み出すことに挑んでこられた社長ならば、お分かりいただけることと思います。書いてしまえばたかだか数行のこの成果を生み出すために、どれほどの努力を重ねてきたのか…。

 

商売が、「人から言われたことを実施する」程度で終わっている請負型なのか、「人が求めていることに先回りして準備する」ところまで挑戦している提案型なのか。同じような商品・サービスを取り扱っていたとしても、これらは似て非なる商売です。

 

もう少し補足すれば、これは取り扱っている商品・サービスが請負的かどうかということではありません。請負的な仕事であってもお客様のニーズや開発に対してこちらが先回りして、それ以上のことを目指していれば、それは、ビジネスとしては提案型になっているということです。

 

なぜ、こういった一見些細にも見えることについて必死にお伝えしているかといえば、経営の本質、強さというのは、この経営者の意識によって決まるからです。

 

言われたことをやるだけだって大変だ、という声が聞こえてきそうです。もちろんそのとおりなのですか、このご意見を発せられる時点で、こちらからお伝えしたいことが、まだ十分にご理解いただけていません。

 

御社にとって初めてで大変なことかもしれません。ですから「これまでにやったことのないことへの挑戦」という意味で、確かに一種の挑戦ではあります。

 

しかし、「言われたことをやる」ことを挑戦というならば、これは「はじめてのお使い」と同じ。言われたことをやってお駄賃を貰おうという子供じみた意識のことをお話しています。

 

例えば、大事な人にプレゼントを贈るとして、本人に何が欲しいかと聞いてしまうのか、あるいは聞かずにこちらで考えようとするのか。「結果として同じプレゼントだったとして、このプレゼントの持つ意味は同じですか?」とお聞きしています。

 

直接答えを聞かずに、こちらで考えてプレゼントを贈れば、結果として欲しいモノではないかもしれません。しかし、それが当たれば相手の喜びは極めて大きなものになります。

 

請負的事業が請負型ということではなく、あくまでも経営に対する意識の違いだとお分かりいただいたことと思いますので、語弊を恐れずにお伝えすれば、請負型の意識にいる限り、本当にお客様を喜ばせることはできていないということです。

 

それでもなお「いや、喜んでくれている」と仰りたい気持ちも分かりますが、お客様の“喜び度”という指標があったとすれば、言われたことをやってくれた“喜び度”と、言われもせずにやってくれた“喜び度”はケタが違うということです。これが売価や粗利となって現れるのが商売の世界です。

 

お客様に喜んでもらった上に儲かる。請負型に甘んじている限り、商売人として限りない喜びを感じるこの瞬間を経験することはありません。もし目指すならば、先に頭を使って提案型に切り替えていくことが欠かせません。

 

すごく簡単にいってしまえば、経営は勝負事です。勝負事であるという意味は、無駄になってしまうかもしれない努力を先に払う覚悟があるのか…ということです。

 

「何が欲しい」と聞いたプレゼントを贈れば、それはプレゼント代金を渡したのと同じことですが、サプライズプレゼントには代金以上のプレミアムな価値が生まれます。

 

同じような商品・サービスを取り扱っているにも関わらず、収益性に極めて大きな差が生まれる原因は、従業員のモチベーションなどではなく、経営者の勝負意識にあります。

 

先行努力に投資していますか?

お客様の喜びを最大化する勝負の世界に出ていますか?

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