【第145話】“大盛”に学ぶ、永く続く商売の原則

足りてる時代、商売を成長させることはおろか、維持するのも大変な時代です。御社では売上や利益を維持・向上させたいと考えた際、どのような取組みを掲げるでしょうか?

 

なかなか売れない……には原因があります。売りモノなのか、売り方なのか、売り先なのか…、原因への対策をしないまま、お客様とのコンタクトを増やしたところで、売上拡大が望めるはずもありません。

 

その理由、販売不振の原因に立ち返って、整え直すことが肝心です。

 

そういった際の方向性として「業態化」が挙げられます。業種とは○○業や○○屋、業態とは、コンビニエンスストア、ディスカウントストア…、提供の仕方による分類と言われてきました。

 

業種を卒業して、業態へと進化していきましょう――、と。

 

ですが、よくよく考えてみれば、当然のことながら、足りてる時代に経営を進化させようとすれば、それは自ずと売りモノのみならず提供の仕方に対する工夫が欠かせません。

 

要は、これからの新事業や販売拡大は、全て実態的には「業態開発」の要素を含んでいるということです。

 

このことは、販売拡大を考えたならば、業態を進化させるために、大なり小なり“開発”としての思考的努力が欠かせないということでもあります。

 

大切なことなので、あらためて申し上げますが、今の時代、基本的に足りています。そういった中で、販売を伸ばそうとしているのです。この前提をしっかりと認識しておくことが大切です。

 

いつしか、体重計はヘルスメーターになり健康を売っています。喫茶店はカフェになり心地よい居場所を売っています。魚釣りは魚を食べるためではなくスポーツになっています。

 

ですから、売りモノの先にあるモノ。それこそが本当の売りモノ。そこの部分を開発することが、販売拡大の出発点になるということです。

 

よって、「業態化」という進化は、提供の仕方に留まらず、独自の事業形態を築くことや、新たな価値提案を生み出す取組みと捉えて、販売拡大に向けた準備を考えると、自ずと次の売上が見えてきます。

 

ただし、「業態化」に拠りすぎて失敗する例が後を絶ちません。この失敗は業態進化を「新しいテーマ」程度と、浅はかに捉えてしまっていることに起因します。

 

例えは、“大盛”の食堂。「他店との差別化を図るために“大盛”の食堂を開店します」といった場合です。

 

こういうテーマ設定をされた経営者の方に「なぜ“大盛”なのですか?」と聞けば、「ここら辺に“大盛”の食堂がないから」「“大盛”って面白いなと思って」「“大盛”ってみんな好きじゃないですか」といった残念な答えが返ってきます。

 

一方、古くから地域で愛されている“大盛”の食堂を営む旦那さんや女将さんに「なぜ“大盛”なのですか?」と同じ質問をしたならば、「しっかり食べてってほしいから」といった答えが返ってきます。

 

「しっかり食べてってほしいから」という基本思想があって、それが“大盛”として表現されている食堂――、ということです。

 

前者は“大盛”を単なる手段として用い、後者はお店からお客様への想いが先に在って、それが“大盛”となって現れています。

 

表面的に“大盛”だけは似ていたとしても、これらの商売には基本思想の有無という商売の核としての決定的な差、質的な大差が存在しているのです。これらは似て非なるビジネスであって、商売としてどちらが長続きするか、説明には及ばないでしょう。

 

販売拡大を目指して業態を進化させようと考えたならば、今一度この基本思想を創ることに立ち戻って考えることが肝要です。

 

御社が本当に売っているモノは何ですか?

御社が目指している想いは、お客様に伝わっていますか?

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