【第146話】成熟期・衰退期の製品開発戦略3つの条件

長い目で見れば、製品・市場には必ず製品ライフサイクル、成長・成熟・衰退という周期があり、順風満帆だった事業でさえ、いずれかの時点で逆風にさらされていくことになります。

 

そうだとしても、経営実務として難しいのは、いつ成熟期から衰退期に入っていくかなど分からないし、時には競合他社と手を携えて業界全体を衰退させないように頑張っていたりします。

 

足りてる時代、伝統産業であるほど、成熟期から衰退期に差し掛かっている可能性が高く、次なる展開をどのようにしていくか、経営者の力量が問われています。

 

どのような商売をやっていても、いずれ代替する競合製品が現れます。その際、商売を続けていこうと思うならば、競争の論点を独自の競争軸として設定しなおすことが大切です。

 

独自の競争軸の設定にあたっては、次の3つの条件を満たすことが肝要です。

①顧客の求める真の価値、効用、便益を真正面から高めること。

②成熟市場の中に独自の領域で個別市場化させ、価格を維持すること。

③その軸が長期に渡って使い続けられること。

 

例えば、ヒゲ剃りのT字カミソリ。ヒゲ剃りは毎日の面倒の一つです。多くの方が電気シェーバーでヒゲ剃りをしていますが、いまだT字カミソリを好む方も多くいらっしゃいます。

 

電気シェーバーは、水、石鹸、シェービングクリームなどが必要というT字カミソリの弱点を解消した製品として登場しました。「水が不要で、どこでもヒゲ剃りできます」と。

 

電気シェーバーの方が便利なのであれば、T字カミソリがなくなりそうなものですが、根強いT字カミソリ派がいます。それは、「剃り味」の違いです。

 

電気シェーバーでもそれなりに剃れますが、T字カミソリほど“つるつる”には仕上がりません。T字カミソリ派にとって、電気シェーバーでのヒゲ剃り後というのは、仕上がり感が足りないのです。

 

電気シェーバーが登場した時、T字カミソリメーカーは相当に焦ったことでしょう。ですが、T字カミソリは電気シェーバーに完全に市場を取られることなく、現在も販売され続けています。

 

T字カミソリメーカーが、仮に「電気シェーバーに負けた」と考え、市場からの撤退を決めていたとすれば、今頃、T字カミソリが世の中から消えていたかもしれません。でもそうなっていないのは、T字カミソリメーカーがあきらめずに頑張った努力の賜物です。

 

現在、T字カミソリメーカーが販売する商品は、5枚刃というものまであります。この5枚刃という製品戦略は、とても秀逸です。

 

刃の数を増やすことで刃にかかる圧力を分散して剃り味を向上させつつ、剃った時のヒリヒリ感というデメリットを低下さています。すなわち、T字カミソリ派の効用を真正面から高めています。

 

そしてビジネス的に見て素晴らしいのは、刃の数を増やしつつ、3枚刃は口ひげ用、5枚刃は濃い人用…、それぞれの刃数に役割を持たせることで、ヒゲ剃り市場の中に刃数別・使用目的別に独自の市場領域を創っています。

 

これによって、T字カミソリのコモディティ化を防止して、刃が多ければ高くて当然でしょ…という感覚的理解もあって、売価の維持に成功しているという点です。

 

そしてさらに、この戦略の優れた点は、3枚、4枚、5枚…。適当なタイミングで刃の数を増やしていくことで、その後長期にわたって刃数戦略を展開していくことが可能という点です。

 

逆風の中でも存在し続けようと考えるならば、ヒゲ剃りであれば刃の枚数、ハンディクリーナーであれば吸引力と最長運転時間、電動バイクであれば超軽量と航続距離…。その後も長く展開し得るシンプルかつ強力な独自の競争軸の設定が有効です。

 

大手ほどすべての競争軸に対応してきますが、そういった製品とのコントラストをハッキリさせるためにも、1つか2つの競争軸にフォーカスすることが有効です。

 

御社が設定している競争軸は何ですか?

その競争軸は3つの条件を満たしていますか?

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