【第111話】本物の成長発展を支える「独立心」とは
経営の成長発展を何で計りますか、何か成長を現す指標をお持ちでしょうか。
売上・利益が代表的な指標であることに異論はないでしょう。一方で、大切なコトに気付いている経営者は、売上・利益が拡大する中においても、その大切なコトを失わないように心掛けているように見えます。
あるいはむしろ、売上・利益よりもこちらの方を大切にしています。本物の成長をたどっていく上で大切なのが、ご自身としての「独立心」です。
この経営者としての「独立心」とは、株主、債権者といったステークホルダーからの経営への関与の強さという意味での「独立性」とは違います。
あくまでも自社の成長発展は自分で切り開いていく、ということに対するコミットメントに近い感覚です。
こういった「独立心」の強い経営者は、売上・利益の拡大も見据えつつ、独自の成長発展を描くこと自体に挑戦されているので、自ずとニッチで新しい市場創りを目指します。
また、事業を立ち上げるとは、自らの頭で考えて事業モデルを創っていくことだと考えていますので、類似した事業は知恵として参照しつつも、真似をして便乗しようなどとは考えていません。
すなわち、売上・利益は、自分で考えて創るものであって、探してきて貰うようなものではないと考えているのです。
ですから、先行他社を真似したり、ある程度出来上がった事業チェーンに加盟したり、売れそうな商品販売に便乗したり、といったことは更々頭にないのです。
こういった「安易に手に入る売上・利益」を志向する手段を選んでしまうと、そちら側に大切な価値観を合わせにいかなければならず、自ずと依存度が高まり、ご自身の「独立心」を弱めなければならなくなってしまいます。
そして、仮に売上・利益は拡大したとしても、描いていた独自の成長とは、どんどんとかけ離れていくことになってしまいます。
小野梓は、東京専門学校(現早稲田大学)の「開校の辞」で、建学の精神を次の様に述べています。
「一国の独立は国民の独立に基し、国民の独立はその精神の独立に根ざす。
而してその精神を独立せしめんと欲せば、必ず先ずその学問を独立せしめざるを得ず。」
これを事業経営に当てはめれば、「経営の独立は、精神の独立に根ざす」ということです。ですから、独自性あふれる本物の成長を望むならば、社長としての「独立心」の強さを保っていかなければなりません。
これは、近視眼的な売上・利益の拡大よりも大切で重いものです。
「独立心」を礎としないハングリー精神やベンチャースピリッツがあり得るでしょうか。全く想像できません。経営者の「独立心」こそが、独自で豊かな成長をもたらすために欠かせない精神性なのです。
ところが昨今、経営という冠の下、「独立心」に欠ける方々が集う場にお声がけいただくことがあります。
残念な真実をお伝えしなければなりません。こういった場からは、次なる先進的な事業は生まれてきません。
「独立心」を欠く経営者は、いつまでたっても経営を真に伸ばしていくことは叶わないでしょう。本物の成長発展への入口を間違えているからです。
一方、強い「独立心」をお持ちの経営者は、いずれ独自の事業で売上・利益を伸ばしていかれることでしょう。考えを深めるための時間だけの問題です。
ご自身の「独立心」の強さを経営指標と捉えていますか?
その成長発展は独自の道を歩んでいますか?