【第112話】高収益を実現する事業構築2つのレイヤー

「○○社が××事業への参入を公表しました」といった情報は、毎日、新聞やニュースなどで耳にします。しかし、その参入意図や戦略主旨は、手の内を明かすことにつながる守秘事項のため、全てが公表されることはまずありません。

 

公表されている情報というのは、あくまでも表面的な部分なのであって、その奥にある戦略の本質部分は、外部から見て推察はできても、はっきりと分かるものではないということです。

 

したがって、日常触れる情報量を増やしたとしても、戦略策定や事業企画を自らの手で実施しない限り、その力を養うことは非常に難しいと言わざるを得ません。

 

ビジネスマンが××事業に携わってきたといっても、その事業の運用・オペレーションにしか携わったことの無い人がほとんどであって、××事業の企画そのものを行ってきた人とは、経験の質が異なります。

 

つまり、「事業企画」という仕事をしっかりと経験しているのは、創業者、経営者、社内の企画担当者、専門のコンサルタント…実は、それほど多くないのです。

 

これが、「○○業界で10年やってきました」といった経験は十分に見える方が、その良く知る○○業界で事業を立ち上げて失敗する理由です。優れたソムリエであるということと、ワインバーを経営して利益を出す能力とは、必ずしも一致しないのです。

 

改めて申し上げれば、○○業界でオペレーションに携わってきた経験と、○○業界の事業を立ち上げてきた経験とは、積んできた経験に質的な違いがあります。だからといって心配はありません。何事も最初は初めてなのですから、その違いを分かっておけば、それをカバーできます。

 

事業の経営活動というのは、大きく「プランニング」と「オペレーション」という2つのレイヤーから成り立っています。

 

「プランニング」とは、事業構築の技術であり、投資決定の問題です。いわゆる“設計(デザイン)”の論点です。これは、一種の計画ではあるのですが、戦略性の高さからいって、翌年度の定例的な経営計画とは意味役割が違います。

 

続いて「オペレーション」とは、日々の事業運営、“運転”のことです。これは最もベースとなる執行能力であって、重要な経営活動です。

 

ですが、このオペレーション段階で収益性を高めようとしても、その改善余地というのはそれほど大きくありません。つまり、「プランニング」での不十分さを「オペレーション」で挽回するというのは、とても難しいのです。

 

これは、“設計”の違いを“運転”でカバーするようなものです。GT-Rを優しく運転したとしても、プリウスを乱暴に運転した燃費に敵わないし、反対にプリウスでサーキットに出てGT-Rに勝とうとするのは無茶というものです。求めている基本的な“設計”思想が異なるのです。

 

事業を創るというのも「ものづくり」と同様、事業の「構造」を“設計”することです。望む最高の結果を手に入れたければ、そこに至る事前の“設計”が大切なのです。“設計”プロセスとは思想を固める手順でもあります。

 

「大丈夫、私の頭の中にはある。これまでも、そうやって走りながらやってきた。」と仰るかもしれません。それはそれで一つの経営の進め方だとは思いますが、ここでは「高収益」を目指そうとしています。

 

現実問題として、確かに「事業はやってみなければ分からない」のですが、それにも程度があるのです。こうなりさえすればこれだけ儲かる、という一定の設計思想下で経営を進めていくのと、都度発生した問題に対処しながら、利益はその結果と捉えるのとで、どちらの方が高い収益性を実現しそうですか、ということです。

 

比較的、経験の浅い経営者に共通する傾向として、経営を「オペレーション」レイヤーだと思い込んでいるという点が挙げられます。「プランニング」レイヤーに対する意識が欠けていると、経営は常に後手に回るという症状となって現れます。

 

「オペレーション」上の絶え間ない改善的な工夫努力も基礎力として大切ですが、高収益を標榜するのであれば、それを支配的に司っているのはむしろ「プランニング」の方です。

 

経営意識の重点を「プランニング」に置いていますか?

「プランニング」の時間確保に努めていますか?

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