【第110話】経営に「勢い」を宿すための必要条件
経営において「勢い」とは、成長プロセスという上り坂を登っていくために欠かせない条件の様なものです。よって、どうやって組織に「勢い」をつけていくかは経営者として大切な仕事です。
今の商売が大きくても小さくても、伸びている企業にはある種の「勢い」があります。「勢い」があるから伸びているのか、伸びているから「勢い」があるのか。。。
何やら禅問答のようになってしまいましたが、その実、「勢い」を宿すためにはいくつかの条件があります。
ただし、なんとなく表面だけ元気な企業の「勢い」と、真に伸びている企業の「勢い」とでは、現れ方が全く異なります。
表面だけ元気な企業の「勢い」は、イベントのような姿で世に現れます。
例えば、本質的には全く目新しくもないサービスに、世の中をひっくり返すといった過大な目的設定を据えることで、イノベーティブな新サービスかのように説明するコピー。自分達こそがイノベーターで世の中をリードしているかのような言動。
そして、事業への賛同は、イベントへの参加のような文脈で促されます。
更にこういった取組は基本的に単発です。当たらなければ次のサービスが打ち上げられるだけです。次から次へと先進的という名の下、お客様の本質的な欲求とは程遠い方法論ベースの新製品・新サービスが乱発されます。
こういった企業の「勢い」というのは、限りなく“元気”に近い感覚です。
一方、真に伸びている企業の「勢い」は、こういったイベント的なものとは一線を画すものです。
まず、「勢い」の起点がはっきりしています。それは経営者の意思表明です。大きな目標設定に対して、それを愚直に実現していくための道筋や、その際、自社が取るべき手段に対する価値観の表明ということです。
お客様を通じてその大きな目標が達成されていくことを知っているので、自社の製品・サービスは、お客様を常に表側、自分達を裏側に置き、その立場から利益を得ているということを踏まえています。
これは、下請けといった取引構造のことではありません。どんな商売も繁盛はお客様あってのことという、至極真っ当な商売の原理原則を守っているということです。
自分達が主役になるのではなく、お客様を主役に事業を回しているのです。
そして、「勢い」を支える自信は、粛々とした日常業務の中で踏ん張り続けてきたことに拠っています。競合他社のどこよりも私達が一番お客様を支えているはずだという、裏方としての自信です。
その踏ん張りとは、行動的な努力というよりはむしろ思考的な努力によるところが、また表面だけ元気な企業の「勢い」とは違います。自社が持つ技術をいかにお客様の便益に転換するか、そういった工夫努力を積み上げてきたという一日の長に対する誇りです。
そして最後に最も異なるのが“計画性”です。表面だけ元気な企業の「勢い」は、思いついたらすぐにやってみるといった類の努力です。確かにこれも努力ではあるのですが、経営体のカルチャーとしてはとても脆弱と言わざるを得ません。
真に伸びている企業の「勢い」は、とても計画的です。新製品を最低でも毎年一つは出す、絶対に100件の改善を行う、新事業への取組は予算化して絶対に使いきる…イノベーションなどと派手な名称は不要で、工夫努力が日常業務になっているのです。企業文化に近いところに「勢い」が根付いているのです。
アイディアが放って置いても沢山あふれ出る好調期に差は生まれません。むしろアイディアが思い浮かばない時こそ踏ん張り時で、そういったバイオリズム下で、いかに愚直に取り組んできたかが、組織の「勢い」の安定感を生み出します。
御社の「勢い」は成長を具現化するのに十分ですか?
真の「勢い」を生む条件は整っていますか?