【第83話】成長投資で大切だけど忘れられがちな経営指標とは

経営とは何といっても投資です。お金が先に手元から離れて、後からリターンとなって回収されます。

 

投資した金額よりも多く回収できれば、リターンがプラスということになり、これが次なる成長拡大に向けた再投資、拡大再生産の資本になります。

 

経営活動をより大きなスケールへと成長拡大させていくためには、絶対に投資が必要です。一方で、経営が傾く根本的な原因も投資です。

 

巷では、販売不振が経営行き詰まりの原因と言われることもありますが、根本的な原因は違います。過去の投資を回収・現金化できず行き詰まるのです。

 

つまり、現金が固定化するような投資を借入で行っていなければ、例え販売が不振にあえいだとしても、相応に投下する費用を下げれば良いですし、例え資金が底をついたとしてもデフォルトして経営が行き詰まることはありません。

 

経営を資金面から見れば、リスクの本質とは外的要因としての販売変動ではなく現金の固定化であり、リスクにさらされている大きさというのは、経営者の意志で行った設備投資や仕入在庫といった現金が固定化されている部分のことです。

 

よって、投資とは現金の固定化という意味で「リスクを取る」ことです。こう考えれば、投資のリスクをしっかりと認識し、回収やリターンの目論見を算段し、勝算を上げる計策努力が不可欠だという主張をお分かり頂けるかと思います。

 

お金が無くなってしまうリスクがあるのですから、元来、投資とは既に儲けたお金や出資といった返す必要の無いお金で実行することが望ましいといえます。ところが投資の多くは借入で賄われているという実態があります。

 

借入による投資のメリットは「時間」です。先に稼いで、それを投資に回すという流れが理想的ですが、それを待っていたのでは時間がかかってしまうため、先にお金を借りて投資することで事業の拡大を狙っているのです。

 

投資の直接的な結果は貸借対照表(B/S)に表れます。設備投資であれば、これまであった現金が設備として固定資産に変わります。この際、現金が足りず借入でまかなっていれば、その分が負債として増え、その分だけ総資産も増えます。

 

借入の利払いによる節税効果を借入の根拠にする方もいらっしゃいますが、低金利の時代、その影響は限りなく小さいといえます。

 

借入による投資は、自己資本に対してその何倍の大きさの総資本を事業に投下しているかという「財務レバレッジ」の視点で見れば積極的にも見えますが、その反面、「自己資本比率」や「D/Eレシオ」の視点で見れば、経営の安全性を下げていることに他なりません。

 

B/Sは経営者の意志で創り上げていくものです。単年度の経営結果である損益計算書(P/L)も大切ですが、それ以上に、B/Sはこれまでの意思決定の積み重ねを表しているだけに、重要な意味を持っているのです。

 

経営理論上、事業の拡大に伴い、経験蓄積や単位あたり生産コストの低下により、収益性は向上すると言われています。ところが実際、必ずしもそうなっていないという現実があります。

 

その主因となるのが「人」です。投資した設備が労働装備的で“生産性”を向上するような類であれば良いのですが、投資した設備を運営するために更に「人」が必要な場合、収益性の向上は期待しにくくなります。

 

これは、ヒト・モノ・カネという経営資源の内、ヒトだけがB/Sに資産計上されないことによるものであり、オフバランスされていることによって資産効率を読み誤るという投資の盲点といえます。

 

投資に際しては、回収するに見合った売上規模の向上も必要ですが、同時に人的な“生産性”向上の視点が不可欠です。

 

経営指標として考えるならば、投資によって総資産回転率(=売上高/総資産)を高めると同時に、“生産性”改善による「従業員一人当たり売上高」の向上が大切です。昔ながらの“生産性”に、今から投資してしまっては勝ち目など期待できません。

 

意志を持ってB/Sを作っていますか?

投資では“生産性”の向上を目論んでいますか?

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