【第82話】売上至上主義の限界と処方箋

既存事業の拡大、新事業への進出。。。経営の成長発展を考える際、目標指標として売上高は中心的な役割を果たします。

 

ところが、売れなければ利益が出ないことは言わずもがなですが、売れたからといって利益が出るとは限らないという事実に、予め目を向けておくことがとても重要です。

 

様々な業種・業態がありますが、事業活動を大括りに見れば、「作る」と「売る」に分類することができます。

 

「売る」に軸足のある商売というのは、例えば小売業、卸売業といった流通業や商社、販売代理業といった販売能力による事業です。

 

こういった商売は、基本的に手数料ビジネスのため、手数料率を超えて利益を出すことはできません。よって、利益を増やしたければ売上高を上げるといった、流れそのものを太くすることが必須となる事業構造といえます。

 

この「売る」商売は、取り扱う商品そのものに手を加える必要性が低いため、売上高を伸ばしやすい業種といえます。

 

また、「売る」商売は、取引に関するお金のやりとりを伴うため、金融的な機能を有するという側面があり、仕入に対する数量割引や支払サイトなど、商取引そのものに関して工夫余地があるといえます。

 

一方、「作る」に軸足のある商売というのは、鉱業、鉄鋼、化学、木材、繊維といった素材的な業種や、建設、電機製造、輸送機械、情報通信、エネルギーといったエンジアリング系企業です。

 

こういった商売は、材料になんらかの加工という付加価値を施して製品化するため、利益確保のためには、売上高の前に付加価値としての粗利を考えておかなければならない事業構造といえます。これは手数料のように予め契約で決まるものではなく、最終的にはお客様が決めることでもあります。

 

「作る」商売は、付加価値についての工夫努力が必要不可欠である反面、工夫如何によっては大きな粗利を生み出しやすい業種といえます。

 

サービス業は、無形性が特徴でありカタチが無いと言われていますが、飲食業であれば店舗施設、メニューや料理、宿泊旅館業であれば建物や宿泊メニュー、教育サービスであれば専門性やカリキュラムなど、お客様が選んで買えるような目に見えるカタチにしなければ商売にはなりません。

 

サービス業は、「作る」と「売る」の複合業種であるため、見た目上その判断が難しいのですが、「作る」と「売る」のどちらに軸足があるか。。。という視点で見ることによって、経営向上へのヒントが見えてきます。

 

例えば飲食店ですが、流通を中心に据えているのか、加工を中心に据えているのかで全く異なる業種ということができます。

 

海外で流行ったパンケーキのお店を日本に出店するというのは、料理や業態を輸入してきたという意味で流通業であり、「売る」に軸足があります。一方、修業を積んだ板前さんがやっているお寿司屋さんは、素材を仕入れて加工調理する過程が付加価値の源泉であるという意味で、「作る」に軸足があります。

 

経営の成長発展に向けて売上高の向上を目指すことは大切ですが、この際、重要なのは売上高の向上をどれだけ利益に結びつけることができるかを予め考えておくことです。

 

「作る」と「売る」という活動を利益創出という視点から比べれば、「作る」に軍配が上がることは容易にお分かり頂けると思います。

 

売上高の向上で高収益を目指すならば、先ずは付加価値に対する工夫努力が重要であり、「作る」視点で高粗利に取り組む過程が欠かせません。

 

売れさえすれば儲かる事業であることが予め設計されているから、売上高の向上が利益をもたらすのです。まずは売りモノの核となる「作る」にさかのぼって考えた上で、「売る」についての打ち手を展開することが、収益性を向上させるために必要な基本ステップなのです。

 

経営向上に対する視点は「作る」に立ち戻っていますか?

「作る」による粗利設計を経て「売る」に取り組んでいますか?

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