【第7話】社員を大切にするとは

「社員を大切にする」ということは日本企業にとって最も大切な価値観です。お金さえあればクリック一つで株主になれる時代、会社が株主のモノとは言い切れません。この「社員を大切にする」について、経営者の方々からいろいろな取組をお聞きします。私が考える「社員を大切にする」とは、経営理念を共有し、社員の成長意欲に応える環境を整え、その成長能力を売りモノ化していくことを通じて、社員が世の中への貢献を感じること、です。

 

その昔は、自社内で製品・サービスの提供を完結するのが普通でした。しかし、昨今は外注が一般的になりました。これに伴い、どこまで自社内でやるか。。。は重要な意志決定になってきました。バリューチェーンの分化や契約によるビジネスモデルの構築が進んでいます。少し冷たい言い方をすれば価値観の異なる組織が“契約”によって連携して一つのビジネスを行っているのです。こういった外注への取組を経営理論では「固定費の変動費化」と呼び、これを進めることで企業は費用のコントロールが容易になりました。

 

このような柔軟な連携によって、企業が提供する製品・サービスが高度化・多様化していることは顧客にとって喜ばしいことです。工場を持たないメーカー(ファブレスメーカー)もあるほどで、極端に言えば、資金さえ調達できれば外注を組み合わせることで何でもできてしまうのです。こういった経営環境だからこそ、自社の考え方、育てていきたい独自能力、その能力をどのように使って世の中に提供していくのか、という基本となる思想がなければ社員の意識は散らかってしまい、成長を期待することはできません。

 

こういった背景から、自社で保有し育てていくコアとなる能力を見極めておくことが、これまで以上に重要なのです。コア能力を認識した上で、その能力の用途として広く事業を展開していけば良い訳で、事業ドメインにこだわる必要性は低下しています。

 

経営を成長拡大していこうとすれば、組織能力の向上を意図的に進め、その能力を売りモノとして価値化し、顧客への販売法を構築する、という一連の活動を強していくことが不可欠です。これがまさに収益事業立ち上げのプロジェクト推進であり、このような一連の取組を行っていくことが社員の成長を促し、延いては企業に成長をもたらします。

 

収益事業立ち上げのプロジェクトは、創造性、工夫努力で利益を生み出すことを目指す取組みです。困難も一層ですがこういった挑戦領域に踏み出さない限り、成長など期待できないのです。ただし、挑戦領域に出るということは危険なので、しっかりと準備し姿勢を整えていくことが不可欠です。

 

開発もルーティン化してしまうと、設定された期間や予算で納まるところまでしか挑戦しなくなるため、そのパフォーマンスは時間と共に下がってきます。一方、プロジェクト型で進めるとしても、場当たり的にならないよう再現性の高い仕組みが必要です。弊社ではプロジェクト推進のノウハウ一式を企業に導入することで、継続的にプロジェクトを生み出す仕組みとして定着させることをねらっています。そういった未知の領域に取り組むことを通じて社員は成長を感じ、また新たな挑戦に取り組むという好循環が生まれるのです。そしてこの好循環が拡大再生産の流れとなって企業を成長へと導いていくのです。

 

新製品・新サービス、新事業。。。収益事業プロジェクトへの挑戦は人を育てます。研修などでは身に付けることができない真の実務能力です。これこそが会社と社員の成長を同時にもたらす唯一の道なのです。

 

人間は何歳になっても成長意欲を持っています。これは人間の根源的な欲求なのだと思います。

 

御社では社員を大切にする取組の中心に「社員の成長」を据えていますか?

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