【第62話】経営の成否を分かつ『売る』と『売れる』の意識の違い

失礼を覚悟の上で申し上げますが、社長殿のお話をお聞きしていて「古い。。。」と感じることがあります。

 

昔話や武勇伝といった類ではありません。もちろん年齢のことでもありません。

 

更に、決して商品やサービスが古いということでもありませんし、IT活用に対して消極的といったことでもありません。

 

「古くたっていいじゃないか。」とのご意見が聞こえてきそうですが、すなわち、儲からなくなっているということなのです。収益性の低下。。これは経営として大問題です。

 

この「古い。。。」の理由は、実はとてもシンプルです。

 

ご自身の事業の“範囲”についての認識が「古い。。。」のです。

 

自社の事業を説明する場面で、経営を成長軌道に乗せている社長殿は、共通して自社の商品・サービスのみならず、その提供方法に重点を置いて説明されます。

 

一方で「古い。。。」と感じる社長殿は、自社の商品・サービスの特徴についてご説明されます。よく言えば「こだわり」とも言えるのですが、それがどう売れていくのかという、お客様との接点が見えてきません。

 

つまり、ご自身の事業の“範囲”についての認識が「古い。。。」とは、商品・サービスまでしか見えておらず、その商品・サービスの提供方法にまで意識が及んでいない状態なのです。

 

このような意識の“範囲”は、経営上とても重要です。それは、自社の事業が利益を生む価値の源泉をどこまでと捉えているかの違いに他ならないからです。

 

商品・サービスが売りモノだと考えている場合、それが出来上がった時点で売り出します。意識としては『売る』です。こんな商品・サービスはいかがですか。。。と。

 

一方で、提供方法にまで意識が及んでいる場合、お客様まで情報が届く道筋を整えた上で販売をスタートしますので、後はお客様の購入のタイミング待ち、判断待ちになります。ですから、意識としては『売れる』になります。

 

少し販売理論的に総括すると、商品・サービスのみを売ろうとした場合、どうしても「プッシュ型」の販売にならざるを得ないということです。一方、提供方法までを整えておくと「プル型」の販売が可能になります。

 

意識の持ち方の違いが、結果として根本的な販売スタイルの違いを生んでしまうのです。

 

この『売る』と『売れる』の意識の違いは、近年経営において極めて重要な意味を持っています。お客様は確実に「プッシュ型」販売を嫌い、「プル型」販売を好むようになっています。

 

購買行動が大きく変化しており、お客様は「自分に有用な情報は欲しいけど、情報を集めた上で自分で判断したい。」と考えるようになっているからです。

 

こういったお客様の購買行動の変化を前提とすれば、「プル型」の販売を展開することが必要不可欠であり、そのためにはお客様との接点となる商品・サービスの「提供方法」まで熟慮して準備することが肝要です。

 

更に、経営を伸ばしている社長殿は、ご自身の事業の“範囲”に「時間軸」まで取り込むようになっています。

 

お客様とのお付き合いが永く続く商品・サービス設計とそれに相応しい提供方法開発です。

 

一回きりの販売であれば「プッシュ型」でも受注はあり得るかもしれません。一方で、末永いお付き合いをしたいと考えれば、こちらの情報をお伝えした上でお客様の判断を待つことが、お付き合いの入口としてあるべき礼儀といえます。

 

「プル型」の販売でなければ、そういった関係を築くことは難しいと言えるでしょう。

 

お客様の購買行動は劇的に変化しています。そのために、提供方法に対する工夫努力がこれまで以上に大切です。

 

御社の販売スタイルは「プル型」になっていますか?

お客様の決定を待って『売れる』経営になっていますか?

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